2015 Fiscal Year Research-status Report
液体に溶存するネプツニウムの陽イオン-陽イオン相互反応に関する研究
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26420869
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤井 俊行 京都大学, 原子炉実験所, 准教授 (10314296)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ネプツニウム / ウラン / ラマン分光分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、ネプツニウム原液を用いて試料調製を行い、吸光分光分析及びラマン分光分析を行った。平成26年度に得られたウラニル錯体の分析結果と比較し、電子配置の違いによる錯生成の差異について検討した。 ネプツニウムを用いた試験について、実験系は塩化物系とした。ネプツニウム(Np-237)を含有する硝酸溶液を出発原料とした。溶液をテフロンバイアルに分取して赤外線ランプを用いて乾固した。そこに塩酸を添加して乾固する作業を2回繰り返し、化学形を塩化ネプツニルに調整した。溶媒として、アルカリ元素(Li及びCs)の塩化物及びアルカリ土類元素(Ca及びBa)の塩化物を用い、それぞれの濃厚溶液を調製した。乾固した塩化ネプツニルを、調製した塩化物溶液に溶解した。 調製した試料を蓋付き石英セルに封入し吸光分光分析を行った。分析装置は現有設備の紫外可視近赤外吸光分光光度計(日本分光製、V-570)を使用した。可視-近赤外領域の吸光ピークを詳細に評価し、ネプツニウムの原子価を評価した。溶液内にはNp(V)のネプツニルとNp(VI)のネプツニルが共存することが確認できた。同じ試料についてラマン分光分析を行った。分析装置は現有機器(日本分光製、NRS-3100)を使用した。ネプツニルイオンのO=Np=O分子の対称伸縮振動に着目し、ラマンシフトを測定した。測定から得られたO=Np=O分子の振動エネルギーを文献値と比較し、分析の再現性を確認した。Np(VI)について分子振動エネルギーは系中の塩素濃度の増加に伴い減少することが明らかになった。このことはすなわち、ウラニル同様、ネプツニルイオンの赤道面の水和水が塩素イオンで置換されることにより、O=Np=O分子の対称伸縮振動エネルギーが緩和されていることを意味する。Np(V)については振動エネルギーのシフトは小さかった。水和した塩化ネプツニル分子について、ウラニル同様な計算化学的評価が可能であることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた、ネプツニウムの試料調製を行い、吸光分光分析及びラマン分光分析を行った。研究実施計画の内容を履行した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、ネプツニウムを用いた分光分析実験と計算化学評価を継続して行い、総合的な考察を行う。研究計画の変更はない。
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Causes of Carryover |
本研究課題において当初計画通り成果を得ることができたため、その検証実験を行ったのち、成果を論文発表する予定であった。しかしながら、石英セルの破損による分光計の動作不良が生じた為、修復に時間がかかり27年度中に発表できなかった。このため、検証実験と論文発表を次年度に行うこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額としては、本研究課題の成果を論文発表するための論文の投稿及び別刷印刷の費用、及び分光計・セルなどの研究物品費として使用する。平成28年度分として請求している助成金は当初計画に従い、研究に使用する。
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Research Products
(1 results)