2015 Fiscal Year Research-status Report
チタン酸塩のナノ構造制御によるセシウム捕集・安定閉じ込めに関する研究
Project/Area Number |
26420874
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
阿部 英樹 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 環境再生材料ユニット 触媒機能材料グループ, 主幹研究員 (60354156)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | セシウム / 捕集 / 安定閉じ込め |
Outline of Annual Research Achievements |
異なったナノ構造を持つ層状チタン酸カリウム:K2Ti2O5およびK2Ti4O9を焼成法によって合成した。酸性溶液中に分散したそれぞれの材料に超音波を印加することにより、K+/H+イオン交換を促進し、層状チタン酸HxTi2O5およびHxTi4O9を合成した。X線回折分析の結果、HxTi2O5材料はイオン交換の過程で原子層間の結合が切断され、原子層一層一層が独立したナノシート状の構造に転移(HxTi2O5ナノシート)することが明らかになった。一方のHxTi4O9においては、イオン交換処理後も原子層垂直方向の長周期構造が保たれており、ナノシート状構造への転換は認められなかった。ナノシート状材料は一般に高い比表面積(>100 m2g-1)を備え、ガス吸着やイオン吸着に優れた機能を発揮することから、本研究が第一目的とする「水溶液中からのセシウムイオン捕集」に対しては、K2Ti2O5のK+/H+イオン交換処理によって得られるHxTi2O5ナノシート材料が好適であると結論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HxTi2O5ナノシート材料の合成に成功した。HxTi2O5ナノシート材料は水溶液中に高度に分散(HxTi2O5ナノシート材料は10000 rpm遠心分離30分によっても沈降せず;HxTi4O9材料は完全に同じ条件で完全に沈殿)することから、溶解イオン種を高効率に表面吸着・捕集する能力に優れるものと考えられる。本成果は、本研究が目的とする水溶液中からのセシウムイオン捕集・固定化技術の確立に向けた最重要のマイルストーンである。
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Strategy for Future Research Activity |
合成されたHxTi2O5ナノシート材料による水溶液中のセシウムイオンの選択吸着・捕集実験を行う。セシウム吸着・捕集後の材料を二酸化チタン(TiO2)および/または三酸化モリブデン(MoO3)と混合し、大気雰囲気下で焼成および/または融解・電気分解することにより、チタン酸のナノシート状構造をナノチューブ状構造に転換、セシウムイオンを閉じ込める。セシウムイオンを閉じ込めたナノチューブ状チタン酸(CsxTiO2)を水熱条件下(150℃・高圧蒸気圧下)の水溶液に長時間浸漬し(加速試験)、溶液中に溶出するセシウムの濃度を定量することによって、チタン酸によるセシウムイオンの安定閉じ込め効果を定量する。
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Causes of Carryover |
本年度は、セシウム吸着・捕集材料:HxTi2O5の合成とキャラクタリゼーションに注力した。このため、今年度に予定していた、水熱条件下におけるセシウム閉じ込め効果試験を、次年度へ繰り越す結果となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
セシウム閉じ込め効果試験に必要な「水熱合成ベッセル(~50万円)」を購入する予定である。
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