2014 Fiscal Year Research-status Report
超軽起動・大トルク伝達・高変速比型変速機の開発と低始動風波力発電蓄電系への搭載
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26420880
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
湯川 俊浩 岩手大学, 工学部, 准教授 (10347205)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 機械要素 / 設計工学 / 再生可能エネルギー / トライボロジー / 無段変速機 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,新エネルギー発電の中で特に風力・波力発電を普及させるために,新たに,超軽起動特性をもつ大トルク伝達・高変速比型変速機を開発し,発電できる最小の流速(カットイン流速)が小さくても発電が可能な低始動型風波力発電系を検討することである.必要となるキー技術は,「無段変速機」(CVT,Continuously Variable Transmission)であり,この変速機は時々刻々と変化する自然エネルギーを電気に変換するのに適していると考えている. 「無段変速機」は,原動機で発生する回転力やトルクを車軸等の出力側に伝える動力伝達機構であり,回転数を調整しながら回転力やトルクを変化させて出力することができる.従来のCVTは,主に摩擦ベルトや摩擦車によって伝達する方式がとられていた.本研究で扱う四節リンク,ワンウェイクラッチ,カムによる複合伝達機構型無段変速機(LCVT)は,従来の手法とは異なり,摩擦伝動機構でないことを特徴とする.LCVTは,直動機構をもつリンクの伸縮によって,入力軸の回転角速度と出力軸の回転角速度の比を無段階に調整できる変速機構である.この変速比を連続的に可変できるようにするため,リンクの回転力および直動リンクの伸縮を連続的に変化させる.本方式はすべり等による伝達ロスがないため,伝達効率が高いと考えられている. 平成26年度は,LCVTの動力学運動方程式を導出した.この運動方程式は,回転数,加速度,および慣性モーメントが大きい場合のダイナミクスを考慮している.LCVTの変速比の幅が広くとれる特長を活用して,この変速機に対して,ブレーキとしての機能を果たすことができるかを調査した.また,3DCADの解析ツールにより,LCVT機構の動作を検証した.そして,来年度,発電システムに搭載するための,立体カム搭載型LCVT6の設計,製作,機構評価をおこなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
開発経緯として,LCVT1(1号機)~LCVT5(5号機)を試作した.LCVT1とLCVT2 は,非可逆機構を有するラチェット搭載型であり,クランクと連結棒の伸縮方式はモータ駆動であった.LCVT3は,ラチェットからワンウェイクラッチへ変更し,バックラッシの低減化を図った.LCVT4は,連結棒の伸縮用として平板カムを搭載している.LCVT5 は,一周期内の非駆動の区間では,任意のカム変位に設計可能であることに着目し,全ての位相でカムの曲率変動を最小化し,圧力角を30度以下に設定した.以上,LCVT1~LCVT5の開発では,全ての機構の基本的性能を評価するため,PCとAD/DA/カウンター変換回路を使って,リアルタイムに入力軸の回転数を変化させて出力軸の回転速度を測定する実験をし,有効性を確認した. 平成26年度は,四節リンクの運動学の基本原理をもとに,LCVTの動力学の運動方程式を導出した.過去に導出した運動学では,直動機構をもつ連結リンクの伸縮によって,入出力軸の回転角速度の関係を調整できる変速機構であることが既に実証された.今回,回転数,加速度,慣性モーメントが大きい場合のリンク機構のダイナミクスを求めた.LCVTの変速比の幅 0 ~ ∞ が実現できる点を利用して,減速機がブレーキも含めて機能を果たすかどうかを調査した.3DCADの解析ツールを使い,変速比 0 ~ ∞ のシミュレーションをおこなった. 立体カム搭載型LCVT6は,原動機から入力軸に加わる回転力やトルクが各リンクを駆動する他に立体カムを回転させ,この立体カムを介して連結リンクを伸縮させるため,別の伸縮用モータや電源が不要である.LCVT6は,軸受で生じる摩擦を除き,伝達部品間の摩擦力による駆動力のロスや潤滑等のトライボロジー領域の問題を取り扱う必要がない. 以上,26年度終了時では計画通りに進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は, LCVTを用いた発電システムモデルLCVT-GENを設計する. LCVT-GENの制御法として,発電機(ダイナモ,オルターネータ)を追加したシステムを検討する.また,LCVT6を改良し,この発電システムへの搭載用の立体カム搭載型LCVT7の設計,製作,機構評価をおこなう. 27年度の計画内容は,設計開発の他に,理論,解析,評価の項目に分けてすすめる. 理論の構築として,LCVT6の機構要素(四節リンク/ワンウェイクラッチ/立体カム/入出力軸)の機構配置方法について検討する.いずれのレイアウトにおいても,クランクの回転,連結リンクの伸縮,立体カムの回転,出力リンク(てこ)の往復運動が,完全機械式に平歯車とワンウェイクラッチを介して連動でき,確実に変速伝達機構としての役目を果たすかを確認する.そして,トルク伝達効率を求め,機構要素の配置方法に関する理論の評価をすすめる.理論の解析は,数値計算ソフトウェアおよび3DCAD解析ツールを用いて検証する.評価項目として,LCVT6/LCVT7(発電機搭載型)の変速幅/伝達トルク/変速比変動を調査する.つぎに,設計開発したLCVT搭載発電システム(LCVT-GEN)の発電量を調査する.開発の数値目標として,LCVT6とLCVT7のトルク伝達効率は95%以上で従来方式のCVTよりも優れていること,LCVT6とLCVT7の速度変動(脈動)は1 % 以内であること,LCVT6とLCVT7の許容トルクは試作機のレベルで150 Nm以上であること,LCVT-GENの発電効率がCVT非搭載システムを凌駕していることを目標とする. 以上が今後の研究の推進方策である.設計開発,理論,解析,評価を行う際には,必要に応じて文献を収集し,結果を整理した後,論文を作成し,学会発表をおこなう.
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Research Products
(14 results)