2014 Fiscal Year Research-status Report
地域独立系統と大規模電力系統の連系システム安定化制御の研究
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26420882
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
奥野 光 筑波大学, システム情報系, 教授 (10160813)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | エネルギーシステム / 安定化制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
資源枯渇と地球温暖化の対策として、再生可能型や分散型の電源、また小規模地域独立型系統の研究が進められている。一方、従来の商用大規模電力系統は、定態安定度限界を超えないよう、また事故等による過渡安定度を確保するため相差角20~30度以内で運転されるが、需要増加による運用点相差角の増大により不安定性の増大が強く懸念されている。さらに災害対策や経済性を考慮すると、再生可能型、分散型はもとより、地域独立型系統といえども商用電力系統との連系が指向され、大規模複雑な系統の安定化が重要となると考えられる。そこで、色素増感太陽電池、エネルギー貯蔵装置、独立系統を三機無限大母線系統に連系した系統模擬実験システムを構築し、複雑系制御法を用いて安定化を実証することを目的とした研究を進めた。 OGY 法および遅延フィードバック法による制御部を持つ、三機無限大母線系統からなる実験装置を構築した。実験によりその有効性を実証するため、s-Box kit をベースにしてOGY 法および遅延フィードバック制御法を実現するコントローラの設計と作製を行った。発電機の慣性定数、定格容量が共に小さい特性を持つ独立系統に対して、遅延フィードバック制御法の有効性を検討した。また、遅延フィードバック制御法とPID制御法の組み合わせを検討した。系統事故の発電機相差角の擾乱最大値は、通常は母線地絡事故を想定して計算されるが、二回線時間差地絡事故を想定しシミュレーションを行った結果、より過酷であることが分かった。現状よりロバストで信頼性の高い制御法の電力系統を作製する上で、新しい最大過酷事故評価指標に出来る可能性が見出された。次年度に系統に組み込む準備のため、変換効率の良い色素増感太陽電池の作製を試みた。得られた6件の研究成果を、電気学会東京支部茨城支所研究発表会講演予稿集に投稿し、口頭発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、すでに連続系の動揺方程式を離散化した式から、OGY 法における制御入力式を計算し、制御のシミュレーションと実験を行っていたこと、また、遅延フィードバック制御法における遅延時間と増幅率をシミュレーションと実験を行って探索していたこと等、事前の研究蓄積が充分にあったことにより、計画的な実験遂行ができた。 また、三機無限大母線系統もこれまでの研究で試作していたため、大きな支障もなく進めることができたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
系統の状態を計算機に取り込むためのAD ボード関連部を作製する。また、エネルギー貯蔵装置の交直変換部に制御入力を印加するためのDA ボード関連部を作製する。色素増感太陽電池セルを組み合わせたモジュールと交直変換部を作製する。予備実験で作製した電力系統を拡張し、コントローラ、色素増感太陽電池モジュールとエネルギー貯蔵装置、地域独立系統を組み合わせて、系統の制御実験を実施する。系統に色素増感太陽電池モジュールからの不規則で不安定な電力を印加する方法により、また負荷側で短絡事故等を起こす方法により、相差角の動揺を発生させる。相差角の時系列データから、OGY 法および遅延フィードバック法の制御入力時系列を演算する。それによる指令データで、系統とエネルギー貯蔵装置との電力授受をさせることにより、系統の相差角の不規則な変動を安定化できるか調べる。現状よりロバストで信頼性の高い制御法を持つ電力系統を作製するために、二回線時間差地絡事故が新しい最大過酷事故評価指標に出来る可能性が見出されたので、評価に用いることを視野に、安定化制御実験を行っていく予定である。 得られた研究成果を逐次、学会講演会、研究会等で発表する。
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Causes of Carryover |
購入物品の値引率と消費税の計算が同時に加わったため、69円の次年度使用額が生じてしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に購入予定の物品費の一部として使用する予定である。
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