2014 Fiscal Year Research-status Report
資源豊富な元素を用いた次世代型CZTSSe薄膜太陽電池の作製に関する研究
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26420888
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Research Institution | Wakayama National College of Technology |
Principal Investigator |
山口 利幸 和歌山工業高等専門学校, 電気情報工学科, 教授 (60191235)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 薄膜太陽電池 / 化合物薄膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
再生可能エネルギーへの期待が一層高まり、安全・安心な太陽光発電が注目されている。本研究では、稀少元素のInやGaを含まず、資源上の制約が少なく、原材料費が安価であるという利点を持っている、次世代型のCu2ZnSn(S,Se)4薄膜太陽電池の高性能化を目指して、成膜技術を検討することを目的とする。 まず、単体元素を石英ガラス管内に真空封入し、電気炉を用いて、Cu2ZnSnSe4化合物を自作した。実験Iでは、この化合物を用いて、Mo/ソーダライムガラス基板上に積層プリカーサを形成し、このプリカーサとS、Seをガラス管内に真空封入した後、熱処理してCu2ZnSn(S,Se)4薄膜を作製した。真空封入時のS/(S+Se)比の増加とともに薄膜中のS/(S+Se)比も増加した。太陽電池を作製した結果、封入条件S/(S+Se)=0.2の時に、変換効率0.38%で、開放電圧454mV、短絡電流3.0mA/cm2の特性を示した。プリカーサ中へNaFを添加して太陽電池を作製した結果、NaF/CZTSe=7%の時に、最も高い変換効率2.25%、開放電圧315mV、短絡電流22.0mA/cm2が得られ、NaF添加が短絡電流の向上に有効であることが分かった。実験Ⅱでは、連続成膜法を用いてCu2ZnSn(S,Se)4薄膜の作製条件を検討した結果、Cu2ZnSnSe4化合物とSを基板温度300℃で蒸着後、基板温度を570℃に上げ、Sn、Zn、Seを、最後にNa化合物を連続的に蒸着するプロセスが、S組成制御に有効であった。太陽電池を作製した結果、S=0.1g供給した時に、変換効率0.66%で、開放電圧241mV、短絡電流9.06mA/cm2の特性を示した。S=0gでは、変換効率2.04%、開放電圧255mV、短絡電流25.5mA/cm2が得られ、短絡電流の向上が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、稀少元素のInやGaを含まず、資源上の制約が少なく、原材料費が安価であるという利点を持っている、次世代型のCu2ZnSn(S,Se)4薄膜太陽電池の高性能化を目指して、成膜技術を検討することを目的として実施している。申請時の課題として、太陽電池の短絡電流が小さいことによる変換効率の低さを挙げていた。今回、成膜技術として二つの方法によるアプローチを試みており、研究実績の概要に記載したとおり、両方法ともに短絡電流の向上に寄与するプロセスを見出していることは評価できる。しかしながら、Cu2ZnSn(S,Se)4薄膜のバンドギャップから想定される短絡電流の値には達しておらず、更なる改善が必要である。また、変換効率の向上には開放電圧の改善も必要であることから、更なる検討を要する。以上の理由より、3年計画の初年度の実績としては「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、本研究の独自技術であるCu2ZnSnSe4化合物を出発材料として、真空蒸着したCu-Zn-Sn-Seプリカーサや連続成膜法を用いて、Cu2ZnSn(S,Se)4薄膜や太陽電池の作製条件を検討する。IBMによるhydrazine溶液を用いたCu2ZnSn(S,Se)4薄膜太陽電池ではS/(S+Se)=0.05(バンドギャップが約1.1eV)で世界最高効率の12.6%を報告しているが、太陽光スペクトルに整合する活性層のバンドギャップの理論最適値は1.4~1.5eVであり、S/(S+Se)比が0.8~1.0になる。そのため、本申請の成膜技術を基本にS/(S+Se)比が大きい領域の混晶比を有するCu2ZnSn(S,Se)4薄膜太陽電池のさらなる特性向上を検討する。また、初年度の研究実績より、S混晶比=0においても太陽電池特性の改善が見られることから、成膜プロセスを再検討して変換効率の向上を図る。具体的には、Na添加物が有効であることが判明したが、最適な供給方法は明確になっていないことから、成膜プロセス中でのNa添加方法を検討する。さらに、太陽電池のバッファ層の作製条件は、Cu(In,Ga)Se2薄膜太陽電池のために開発したものであり、見直しを行い、Cu2ZnSn(S,Se)4薄膜太陽電池に適合する作製条件を検討し、太陽電池特性の向上を目指す。
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Causes of Carryover |
2015年1月9日~3月31日まで病気入院したため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験に必要な消耗品(タングステンボート)を購入予定
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Research Products
(16 results)