2015 Fiscal Year Research-status Report
環境に適応した運動出力を生み出す神経回路機構の解明
Project/Area Number |
26430004
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高坂 洋史 東京大学, 新領域創成科学研究科, 助教 (20431900)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 神経回路 / 運動回路 / 介在神経細胞 / 遺伝学 / 統計解析 / 運動ダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
1.運動制御に関わる介在神経細胞の探索 昨年度、コネクトミクス解析により、PMSI介在神経細胞の上流の神経細胞の候補リストを作成した。今年度は、これらの神経細胞について遺伝学的手法によって構造・機能解析を進めた。その結果、PMSIの上流の細胞として、pre-PMSI1 とpre-PMSI2を見出した。これらの細胞は各半体節に1つずつ存在しており、興奮性の伝達物質と考えられるアセチルコリン陽性であった。pre-PMSI1は、1つ後方の体節のPMSIに投射しpre-PMSI2は、1つ前方の体節のPMSIとシナプス結合をしていた。Ca imaging法によってこれらの細胞の活動を調べたところ、非常に興味深いことに、pre-PMSI1は、前方伝播特異的に活動し、逆にpre-PMSI2は、後方伝播特異的に活動を示した。これらの結果は、運動回路制御において、活動が伝播する方向とは反対方向に局所的にフィードバックを送っているという新しい機構を示唆するものである。
2.適応的速度制御の回路解析 昨年度、蛍光マーカを用いて、ショウジョウバエ幼虫のぜん動運動を半自動で高解像度で定量する方法を確立した。今年度は、この手法を用いて環境温度を変化させた際、運動ダイナミクスがどのように変わるのかを解析した。ショウジョウバエ幼虫は、高温では高速で移動し、低温では低速で移動する。この適応的速度変化のダイナミクスを定量化した。すると、興味深いことに、速度が変化するにも関わらず、体節収縮の速さと体節弛緩の速さの比が一定に保たれていることが明らかになった。さらに、体節間の収縮タイミングを定量したところ、速度の変化に関わらず、異なる体節間での収縮のタイミングが保たれていることが分かった。この二つの恒量の発見は、運動ダイナミクスをモデル化する上で非常に強い制限を与え、運動制御機構の解明に大きく寄与するものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.運動制御に関わる介在神経細胞の探索 コネクトミクスと遺伝学を用いた解析により、運動制御に関わる新規介在神経細胞の同定に成功し、伝播における局所フィードバックという新しい機構を見出した。
2.適応的速度制御の回路解析 運動ダイナミクスの定量化により、運動出力の適応変化において一定に保たれる量の発見に成功した。これは、神経回路、及び筋・上皮組織の生み出す運動ダイナミクスの適応性についての理解につながると期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.運動制御に関わる介在神経細胞の探索 同定に成功したpre-PMSI1, 2 について、コネクトミクスを用いてさらに上流の細胞を探索し、運動制御を担う介在神経ネットワークの理解を目指すとともに、適応的速度制御の回路機構の解明を進める。
2.適応的速度制御の回路解析 適応的速度制御における、運動ダイナミクスの数理モデル化を進めると共に、その生物学的意義の解明を目指す。
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Research Products
(6 results)