2014 Fiscal Year Research-status Report
ヘテロGPCR変調によるシナプス可塑性調整機構:表面プラズモン共鳴による解析
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26430012
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
田端 俊英 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 准教授 (80303270)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | Gタンパク質共役型受容体 / ニューロン / シナプス可塑性 / グルタミン酸 / アデノシン / 表面プラズモン共鳴 / Cキナーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
従来の研究により、小脳プルキンエ細胞のアデノシン1型受容体A1Rの活性化が1型代謝型グルタミン酸受容体mGluR1に連関する陽イオン電流を減弱し、運動学習を支えるシナプス可塑性の素過程である小脳プルキンエ細胞のグルタミン酸応答性の長期抑圧を阻害することが分かっていた。しかしmGluR1の細胞内シグナリング分子が受ける影響は不明であった。mGluR1とA1RをHEK-293細胞に強制発現させ、表面プラズモン共鳴イメージングによりmGluR1に連関するprotein kinase C (PKC)の活性度(細胞膜へ移行)を評価した。金コートされたグラスにシリコンで壁を築き、この中で細胞を培養した。グラスに斜め下から励起光を当てた。励起光は全反射を起こし、金原子は共鳴して反射光のエネルギーの一部を消費した。PKCが膜移行すると細胞膜に接する金の共鳴状態が変化し、反射光強度が変化した。励起光の入射角が51.4度のとき、高感度に測定できることが分かった。機材の特性により測定中に画面フレームがわずかにずれるが、同じ細胞群を追尾する解析ソフトウエアを開発した。 mGluR1アゴニストDHPGを投与すると反射光強度が約10 %上昇することが分かった。同様の反応はPKC刺激剤TPAによっても誘発できた。またPKC抑制剤bisindolylmaleimide-IはDHPGに対する反応を消失させた。さらにA1RアゴニストR-PIAを作用させておくと、DHPG誘発性反応が消失することが分かった。これらの結果から、表面プラズモン共鳴イメージングによりmGluR1に連関するPKCの膜移行が評価できることが明らかになった。A1Rの活性化がmGluR1に連関するPKCの活性化を阻害することが分かった。またA1RによるmGluR1の機能変調はニューロン特異的な細胞環境に依存しないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の平成26年度の目標は、(1)表面プラズモン共鳴イメージングによるGPCR間の変調を測定する実験系の確立と、(2)この実験系を用いて野生型のGPCR間の変調について基礎的なデータを得ること、であった。 (1)に関して、細胞の培養方法や励起光の入射角度など、測定のための諸条件の最適化を完了し、さらに機材に起因する細胞画像のブレを補正して正確なデータを抽出する解析ソフトウエアを構築することができた。 (2)に関して、野生型のGPCRを発現させた細胞を用いて、mGluR1に連関するPKCのtranslocationを反射光強度の変化として検出することに成功し、さらにA1R活性化がmGluR1に連関するPKCのtranslocationに与える影響を測定することに成功した。 このように平成26年度の所期目標を完全に達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は野生型のGPCRを発現したHEK-293細胞を用いてA1RによるmGluR1の機能変調を評価した。次年度は、マウスから採取・培養した小脳プルキンエ細胞を標本として、自然発現したA1RとmGluR1間の機能変調を実証的に解析したい。またHEK-293細胞等を用いて、複合体形成能が低下したGPCR間での機能変調やmGluR1からA1Rへの逆方向への変調作用を解析したい。後者については細胞内分子のtranslocationによる評価が困難である可能性があり、その場合は各種のA1R連関シグナリングの細胞生理学的評価法を援用したい。
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[Journal Article] Altered actions of memantine and NMDA-induced currents in new Grid2-deleted mouse line2014
Author(s)
Kumagai A, Fujita A, Yokoyama T, Nonobe Y, Hasaba Y, Sasaki T, Itoh Y, Koura M, Suzuki O, Adachi S, Ryo H, Kohara A, Tripathi LP, Sanosaka M, Fukushima T, Takahashi H, Kitagawa K, Nagaoka Y, Kawahara H, Mizuguchi K, Nomura T, Matsuda J, Tabata T, Takemori H
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Journal Title
Genes
Volume: 5
Pages: 1095-1114
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] A590T mutation in KCNQ1 C-terminal helix D decreases IKs channel trafficking and function but not Yotiao interaction2014
Author(s)
Kinoshita K, Komatsu T, Nishide K, Hata Y, Hisajima N, Takahashi H, Kimoto K, Aonuma K, Tsushima E, Tabata T, Yoshida T, Mori H, Nishida K, Yamaguchi Y, Ichida F, Fukurotani K, Inoue H, Nishida N
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Journal Title
Journal of Molecular and Cellular Cardiology
Volume: 72
Pages: 273-280
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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