2015 Fiscal Year Research-status Report
モデル生物を用いた匂いに対する嗜好性が変化するしくみの解明
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26430019
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
広津 崇亮 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70404035)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 嗅覚 / 嗜好性 / 線虫 / 匂い経験 / 嗅覚受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.直前の匂い経験による嗜好性変化の仕組み 匂い経験による嗜好性変化に重要な働きをすることがわかったRas-MAPK経路が、下流でどのような機構を制御しているかがわかっていない。そこで、生化学的手法を用いてMAPKが結合するターゲット分子を同定することを試みた。活性化したMAPKが結合する分子を得るために、MEKおよびMAPKの活性化型タンパク質を線虫の神経系に発現させた。この株と野生型でリン酸化タンパク質を取得して比較し、活性化型MAPK発現株で有意に濃くなったバンドを切り出して、質量分析器にかけた。その結果142個のターゲット候補が得られた。MAPKは線虫の嗅覚系において、嗅覚受容、嗜好性変化の両方に機能していることが知られている。まず前者におけるターゲットを同定するために、候補遺伝子の変異体およびRNAiノックダウン株の匂いに対する反応を観察した。その結果異常を示すものとしてclp-7、icd-1、icd-2、vdac-1が得られた。vdac-1は電位依存性チャネルをコードしており、主にミトコンドリアで働いていることは知られているが、嗅覚系における働きは未知である。vdac-1ノックダウン株の嗅覚神経は匂いに対する反応が著しく低下していた。VDAC-1は嗅覚神経のミトコンドリアに局在が見られた。またVDAC-1はRas-MAPK経路の下流で機能していること、MAPKのリン酸化サイトThr175が活性化に重要であることがわかった。 2.匂いの濃度による嗜好性変化 これまでの解析により、匂いの濃度により働く嗅覚受容体のレパートリーが変化することがわかってきた。線虫は癌の匂いに対して、低濃度では誘引行動を、高濃度では忌避行動を示す(嗜好性変化)。そこで、癌の匂いに対応する嗅覚受容体の探索するために、本年度は1次スクリーニングを行った。得られた候補についてはさらに検証を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
テーマ1、テーマ2ともに当初の計画通りに進展している部分が多く、さらに新たな展開が見られた。論文発表、学会発表、招待講演については計画以上に行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
テーマ1については、ニューロペプチドの働きに特に注目して解析を進める。テーマ2については、癌の匂いに対応する嗅覚受容体の同定を行うことで、匂いの濃度による嗜好性変化の仕組みについて、さらに深く検証を進めたい。
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Causes of Carryover |
当初予定していたニューロペプチドに注目した解析は、イメージング実験が必須であるが、研究室の移転に伴うイメージング装置のセットアップのために遅れが生じ、その結果当初の見込額と執行額は異なった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度にニューロペプチドに注目した解析を実施することにしており、それに使用する。
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Research Products
(20 results)