2014 Fiscal Year Research-status Report
注意欠陥多動性障害モデルにおける発育期の豊かな環境による情動行動形成機構の解明
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26430020
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
飛田 秀樹 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00305525)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 豊かな環境飼育 / CART / 不安様行動 / 社会性行動 / うま味 / 攻撃性 / 扁桃体 / GABA |
Outline of Annual Research Achievements |
豊かな環境飼育において脳内で発現増加するcocaine- and amphetamine-regulated transcript(CART)に注目し、いつの時期(臨界期)からどの要因(刺激要素)で発現増加し、どの神経ネットワークをどのようなメカニズム(発現制御)により変化させ、情動行動の発現変化に関連しているのかを明らかにすることを目指した。 豊かな環境飼育が脳の及ぼす影響の臨界期を検討したところ、離乳直後(生後25日令)からの2週間が不安様行動および社会性行動の発現に重要であることが明らかになった。また、発育期の環境刺激としてうま味物質(グルタミン酸ナトリウム:MSG)を経口から投与する実験も同様に展開した。MSG投与では不安様行動には変化が認められず社会性が亢進(攻撃性の低下)することが明らかになった。 豊かな環境飼育に含まれる各要素の脳に対する影響については、今後検討していく予定である。 扁桃体に発現するCART陽性細胞の特性の検討を検討し、CART陽性細胞が扁桃体中心核にのみ染色され、GABAergic細胞と共染色されることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
発育期の外部環境の変化が情動行動の形成に与える影響とそのメカニズムを解析することが大きなテーマである。発育期の外部環境の変化として、1)豊かな環境飼育、2)うま味の経口摂取、を取り上げて研究を進めている。 本申請は、豊かな環境飼育による情動行動(不安様行動、社会性行動)への影響をCARTに注目し解析を進めている。うま味の経口摂取による情動研究を並行し実施しているが、この研究から発育期早期からのうま味摂取が上部消化管からの迷走神経入力(腸脳連関)を介して攻撃性を低下させる、という非常に興味深い事実が明らかになった。そのため、本課題に特化することなく前述の関連研究を主として進めていった経緯がある。 本課題の当初の計画自身はやや遅れているが、大きなテーマの中で本研究課題に結びつくと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
発育期の外部環境の変化が情動行動の形成に与える影響とそのメカニズムを解析に向け、豊かな環境飼育、うま味の経口摂取、の2つの視点からアプローチしている。 これまでの解析から、2つの発育期の環境刺激の変化に共通する結果、各々に特徴的な結果が得られている。本課題で注目しているCARTについては、豊かな環境飼育により前頭葉と扁桃体に発現が増加するのに対し、うま味刺激ではCARTの変動は認められない。行動変化として似た変化が認められているが脳内メカニズムは大きく異なることが想像される。しかし、基本的な研究計画を大きく変更させる必要はないと考える。 今後も、2つの視点から解析を進めていくが、本申請の当初目的を念頭に入れ解析を進めていきたいと考えている。
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