2014 Fiscal Year Research-status Report
一次聴覚野におけるニコチン性制御による感覚情報選択性の機序
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26430025
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Research Institution | Soka University |
Principal Investigator |
川井 秀樹 創価大学, 工学部, 准教授 (90546243)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
根本 正史 公益財団法人東京都医学総合研究所, その他部局等, 研究員 (80370980)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ニコチン / 聴覚 / 大脳皮質 / アセチルコリン / シグナル・ノイズ比 / 注意力 / 認知症 / 長期増強 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、聴覚皮質内でのニコチンによる神経情報選択のメカニズムを調べることだった。装置購入費の値上がりなどから、研究目的に沿うように、予定していた実験を少し変更した。これまでの研究結果から、ニコチンの投与による音刺激への反応が40分以上長期的に増強されるしくみとして、いくつかのことが解った。まず、音刺激の神経伝達に関わる神経細胞のシナプスに存在する受容体で、神経伝達物質グルタミン酸によって活性されるAMPA受容体の制御が見られた。音刺激だけではこの受容体は制御されないが、ニコチン投与だけで制御された。更に、AMPA受容体のシナプスへの輸送に関わるリン酸化酵素であるERKもニコチンにより活性化されることが解った。これらの結果から、ニコチンによる音刺激反応の増強は、ニコチンの受容体活性によるAMPA受容体の制御後、AMPA受容体の活性特性の増強、もしくはシナプスでのその数の増加が考えられた。 これらの結果は、感覚皮質が行なう神経情報の選択メカニズムの一部を明らかにしたことになる。また、この結果はニコチンによる脳機能の制御のみならず、もともと脳に存在する神経伝達物質のアセチルコリンによる、情報選択機序を表している。なぜならニコチンの受容体を、通常、アセチルコリンが活性しているからである。一般的に耳から入ってくる情報を、我々は取捨選択しているが、そうした情報の選択は、アセチルコリンによる注意力の制御に依存していると考えられている。そのため、本研究のニコチンによる制御が、注意力による情報選択機序を理解することにつながる。さらに、注意力低下症もしくは健常者の注意力の減少が、学習能力や記憶力の低下につながるため、本研究は、注意力の生物学的理解を更に進めるとともに、学習や記憶の低下を伴う認知症などの治療に貢献できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
装置の購入額の値上がりにより、研究方策の変更が必要となり、研究目的を少し変更した。また、研究協力者の都合もあり、「研究の目的」に示した実験の開始が遅れた。これらの理由から、新たな方法でも実験を開始し、成果を得ている(【研究実績の概要】参照)。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、昨年度に引き続いて、予定していた研究を少し変更して進めていく。また、本年度計画していた実験も同時に行なっていく予定である。 昨年度購入した必要装置の大幅な値上がりにより、装置以外の研究材料の購入が困難になったため、予定していた研究の変更を余儀なくされた。対応策として、異なる手法を用いたシナプスにおける制御機構の分子メカニズムの解明に取り組んでいく。 一方、本年度計画していた抑制性細胞種と神経活性の関係性による神経情報選択性メカニズムの解明に関しては、ほぼ予定通り研究を行う。
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