2014 Fiscal Year Research-status Report
加齢脳における長期記憶学習依存的な神経細胞死発生機構の解明
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26430030
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
松野 元美 公益財団法人東京都医学総合研究所, 運動・感覚システム研究分野, 主席研究員 (90392365)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 細胞死 / ショウジョウバエ / 加齢性記憶障害 / グリア / 長期記憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
加齢性記憶障害(Age-related Memory Impairment, AMI)は脳老化の重要な指標となっているが、その発症の分子機構については不明な点が多い。私達は以前、ショウジョウバエで(1)長期記憶学習依存性に若齢脳では見られない細胞死が加齢脳で見られること、(2)長期記憶形成に必要なグリア細胞接着因子Klingon (Klg)、その下流因子であるグリア転写因子Repoの発現が加齢脳で低下していること、(3)若い個体でのKlg/Repoの不活性化も長期記憶学習依存性の細胞死を誘導することを見いだした。当該研究は長期記憶形成のリスクという新たな視点から、Klg/Repo経路を介した神経細胞死抑制機構と、これが加齢により低下したことが長期記憶AMIの発症基盤であるという新規仮説を提唱し、立証・解明することを目的としている。 本年度はKlg/Repo経路の活性低下が細胞死および長期記憶AMIを引き起こすのか検証し、さらにKlg/Repo経路のターゲット分子の探索を行った。その結果、repoをグリアで急性強制発現させると加齢体の長期記憶AMIはレスキューできることが明らかになった。一方、予定していたrepoの急性強制発現によるklg変異体および加齢個体の細胞死のレスキューについては実験設備・条件の確立までを達成した。また、klg/Repoのターゲットとして神経興奮毒性を抑制するグルタミン酸トランスポーターdeaat1を見いだし、(I)deaat1変異体では長期記憶障害および学習後の細胞死が観察されること、(II)その急性強制発現がklg, repo変異体や加齢個体の長期記憶障害をレスキューできること、を見つけた。これらの結果はdeaat1がKlg/Repo依存性長期記憶形成に必要であること、この欠損が長期記憶AMIを引き起こすことを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
行動遺伝学的手法を用いてdeaat1がKlg/Repo依存性長期記憶形成に必要であること、この経路の欠損が長期記憶AMIを引き起こすことを示唆するデータを得た。一方、変異体および加齢個体で観察される長期記憶学習後の細胞死については定性的観察はできたが、データの定量化が難しく、本年度は実験設備・条件の確立までを行った。レスキュー実験は次期に行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は細胞死の定量化を行い、repo/deaat1経路の強制発現によって加齢個体やklg変異体における細胞死がレスキューできるか検証し、これらの個体で観察される長期記憶学習後の細胞死がグリアのrepo/deaat1経路の欠損によるものであることを確認する。さらに、細胞死は長期記憶AMIに必要十分か?細胞死抑制因子の強制発現系を用いて検証するとともに、記憶細胞が死ぬのか?細胞死する細胞はどのように選択されるのか?神経活動との関係性について明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
当初予定していた高速シークエンス委託解析をやめ、別の手法を使用したことと、年度の途中より産休を取得したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
細胞死を検出するTUNEL染色法のキットを含む一般試薬、実験動物飼料、飼育容器、抗体作成費用、学会出張費、論文投稿・校正費用として計上する。
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Research Products
(5 results)