2014 Fiscal Year Research-status Report
錐体路形成における軸索誘導に係るシグナル分子基盤の解明
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26430036
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
尾身 実 藤田保健衛生大学, 医学部, 助教 (00400416)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 真 大阪大学, 連合小児発達学研究科, 教授 (10222019)
岡 雄一郎 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30614432)
猪口 徳一 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60509305)
黒田 一樹 福井大学, 医学部, 助教 (60557966)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 神経科学 / 神経回路 / 発生・発達 / 解剖学 |
Outline of Annual Research Achievements |
錐体路は運動の制御を司る中枢神経の回路であり、大脳皮質第5層から皮質下に入り、脳幹を経て脊髄へとその神経軸索を伸ばす。また同時に脳内の複数の神経核にも側枝を投射し、複雑な神経回路網を形成する。この中枢神経系で極めて長くまた複雑な軸索経路の形成の分子機構について明らかにすることが本研究の目的である。 これまでに、大脳皮質第5層に発現する受容体分子の網羅的探索と網羅的ノックダウン実験によって、錐体路の形成に関与すると考えられるシグナルの受容体分子の候補を複数得た。平成26年度には、それらの受容体分子について、生体内および細胞培養系を用いた解析を開始した。候補受容体について、マウス脳内における分布・局在をin situ hybridization法および免疫染色法を用いて調べた。その結果、候補受容体の少なくとも2種類は、錐体路の形成時期に大脳皮質第5層に強く発現していることを見出した。また、そのうち1種類の受容体分子に関しては、結合しうるリガンドの機能について、大脳皮質神経細胞の培養系を用いて解析したところ、リガンド分子を添加した場合には、軸索の枝分かれが促進されることを見出した。したがって、これらの分子は錐体路の軸索形成に関与していることが強く示唆される。また、国内外の研究機関から候補受容体分子のノックアウトマウスの脳組織を得て、蛍光色素DiIを大脳皮質に注入し、錐体路を蛍光標識することでその伸長パターンの解析を行っている。ノックアウトマウスが存在しない候補分子については、CRISPR/Cas9システムを用いてノックアウトマウスを作成した。順次解析を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに我々はshRNAを用いた遺伝子ノックダウンによる網羅的スクリーニングを行い、錐体路の形成機構に関与する受容体分子の候補を複数得た。次に、これら候補分子の脳内での分布・局在を調べるため、マウスの脳を用いてin situ hybridization法および免疫染色を行った。その結果、候補受容体分子のうち少なくとも2種類は、錐体路の形成が行われている時期であるP2において大脳皮質第5層に限局した強い遺伝子発現が認められた。また、受容体に結合しうるリガンドについて、軸索形成における効果の検討を行った。子宮内エレクトロポレーション法によりマウスの大脳皮質第5層に蛍光タンパク発現ベクターを導入し、第5層の細胞を標識したのち、標識した神経細胞を脳より取り出し、培養した。続いてリガンドタンパクを培養液中に添加し、神経軸索の形成に与える影響を調べた。その結果、リガンドを添加することにより、神経軸索の分枝が促進されていることが観察された。大脳皮質第5層に蛍光タンパクを発現するFezf2-tdTomatoトランスジェニックマウスの大脳皮質神経細胞を用いた場合でも同様の結果を得た。これらの結果は、候補受容体分子が錐体路形成に深く関与していることを強く示唆しているものである。 また、国内外の研究機関より、候補受容体分子のノックアウトマウスの脳組織を得て、蛍光物質DiIをマウス脳に導入し、錐体路の可視化を行った。ノックアウトマウスの入手が困難な候補分子に関しては、CRISPR/Cas9システムによりノックアウトマウスを作成しており、解析を開始する。 以上、平成26年度の実施計画にしたがい一定の成果を得ており、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度の研究実施計画に基づいて研究を行う。CRISPR/Cas9システムによって作成したノックアウトマウスを用い、蛍光色素DiIの導入により、大脳皮質第5層細胞を蛍光標識することで錐体路を可視化し、錐体路の形成・伸長への影響を調べる。ノックアウトマウスによって錐体路の形成に影響の見られる受容体分子については、それら遺伝子の過剰発現による回復実験や異所的発現により錐体路の形成に与える影響を調べ、その分子的機構をさらに解析する。受容体分子には特定のリガンドが結合するはずであるので、in situ hybridization法もしくは免疫染色法によって、受容体分子に対する既知のリガンドの候補の、脳内での発現パターンを調べる。また、大脳皮質神経細胞の初代培養系を用いてリガンドタンパクを作用させて軸索形成・伸長に与える影響を観察することで、リガンド分子の絞り込みを行う。さらに、候補として挙がったリガンド分子を脳内に異所的に発現させる、あるいは受容体リガンド結合に対する阻害分子を投与することで、錐体路形成に与える影響を調べ、錐体路形成に関わるシグナル機構を解析する。
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Causes of Carryover |
一部の実験において次年度に引き続き解析する必要が生じたため、次年度での使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究遂行に必要なものとして、神経軸索標識色素、免疫染色に使用する抗体および試薬、細胞培養に必要な培地・血清およびプラスチック製品を計上した。加えて、分子生物学実験に用いる酵素や試薬類に対する費用を計上する。また、成果発表および情報収集のための学会参加に掛かる費用と、論文を投稿するに必要な費用も計上する。設備備品費は計上していない。
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[Journal Article] DBZ Regulates Cortical Cell Positioning and Neurite Development by Sustaining the Anterograde Transport of Lis1 and DISC1 through Control of Ndel1 Dual-Phosphorylation2015
Author(s)
Okamoto M, Iguchi I, Hattori T, Matsuzaki S, Koyama Y, Taniguchi M, Komada M, Xie MJ, Yagi H, Shimizu S, Konishi Y, Omi M, Yoshimi T, Tachibana T, Fujieda S, Katayama T, Ito A, Hirotsune S, Tohyama M, Sato M
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Journal Title
Journal of Neuroscience
Volume: 35(7)
Pages: 2942-2958
DOI
Peer Reviewed
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