2015 Fiscal Year Research-status Report
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26430041
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
星 秀夫 東邦大学, 医学部, 助教 (30568382)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
狩野 修 東邦大学, 医学部, 講師 (20459762)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 網膜 / 神経節細胞 / ギャップ結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
私たちがものを見るとき,まず網膜の神経回路が視覚情報処理を行い,その答えが活動電位(スパイク列)として脳に送られる.スパイク列を生み出す神経節細胞が脊椎動物では約20種類以上あり,各々が別々の特徴を持ったスパイク列を脳に送る(「1細胞=1機能」).それぞれの神経節細胞は,網膜の内網状層(IPL)の違う高さに樹状突起を伸ばし,同じ高さに軸索を伸ばしている双極細胞やアマクリン細胞からシナプス入力を受け,神経回路を形成し,回路ごとに仕事をする.つまり神経節細胞が行っている仕事を理解するためには,まずその神経節細胞が構成する局所神経回路をシナプスレベルで調べることが重要になってくる.本研究で注目した細胞は30年前に盛んに研究されていた細胞である.しかしその細胞が網膜全体でどのような分布様式であったのか,またどのような局所神経回路を形成しているのかということは不明のままであった.本研究では,注目した神経節細胞の分布様式と,その局所神経回路を共焦点顕微鏡を用いて形態学的に明らかにし,その機能を推測することを目的とした.本研究では,次の①~⑤のこと示唆する結果を得た.①逆行性輸送による全神経節細胞の標識後,ターゲットの細胞を確実に同定できるようになった.②ターゲットへの細胞内色素注入により,IPLのOFF層に樹状突起を伸ばすことがわかった.③網膜中心部では注目した細胞が眼球の水平軸に平行に並んでいた.④コネキシン35/36を介したギャップ結合で目的の神経節細胞同士がつながっていた.⑤OFF層に樹状突起を伸ばす神経節細胞は,通常OFF型双極細胞からの入力しか受けないはずだが,注目した細胞はON型双極細胞と軸索の途中のOFF層でも異所性にリボンシナプスを用いて興奮性入力を受けていた.これは30年間謎であった細胞内記録で偶然得られたON-OFF応答を証明する形態学的なデータとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の大目標を達成するための,第一段階としての形態学的なデータがそろったので,現在論文投稿準備中である. 次年度(3年目)の電気生理学的な実験を行うにあたって,次につながる重要な形態学的な結果が得られた.
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Strategy for Future Research Activity |
形態学的アプローチによる仕事をまず論文としてかたちにする.次に,形態学的データから推測される機能を神経回路網に注目して電気生理学的に証明する.そして形態学的,電気生理学的に明らかにした神経回路が実際にどのような視覚情報処理を行っているかを以下の①~③の実験で調べる.①神経節細胞につながる神経回路網をより詳細に調べるため,薬理学的に興奮性シナプス,抑制性シナプス,ギャップ結合などを阻害して電気生理学的に神経回路網を証明する.②45度ごとに傾きの異なるバー刺激(静止・運動)を行い,注目している神経節細胞の方位選択性を調べる.③視覚心理学で用いられる視覚刺激を呈示して,注目した神経節細胞の機能を調べる.
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Causes of Carryover |
本年度後半,論文執筆作業に集中したことにより,当初予定していた実験動物使用数が抑えられたことが次年度使用額が生じた原因の1つだと考えている.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文完成後の校正費用の一部として利用させていただきます.
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Research Products
(1 results)