2014 Fiscal Year Research-status Report
CRMPの神経回路形成および神経再生における役割の解明と脊髄損傷治療への応用
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26430043
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
大島 登志男 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (20311334)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 神経発達 / 神経再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経細胞の配置と神経回路形成は、神経系の形成過程で行われる重要なプロセスであり、これまでの研究で様々な制御分子が同定されてきている。軸索ガイダンス分子の中でもセマフォリン(Sema)は軸索の伸長を阻害する。我々はSema3Aの反応にCdk5が必要であることを示したが(Sasaki et al., Neuron 2005)、この過程で、Cdk5がCRMP2のSer522をリン酸化し、このリン酸化が軸索退縮反応に必須であることを示した。CRMP2のリン酸化はCdk5によるSer522をプライミングとしてさらにGSK3によりThr509, Thr514, Thr518がリン酸化される。これらのリン酸化によりチュブリンダイマーとの結合能が低下して軸索の退縮が起きることを示した(Uchida et al., 2007)。我々は横浜市大の五嶋研究室と共同で、このリン酸化部位のSerをAlaに1アミノ酸置換したCRMP2knockin(KI)マウスを作出した。さらに、CRMP4欠損マウス、CRMP1欠損マウスなどとの重複マウスを作製し、CRMPの神経発達における役割を解明してきた(Yamashita et al., JNS 2012;Niisato et al., 2012, 2013)。しかし、CRMPは1-5まであり、これらの代償機能により、単独の遺伝子改変ではその役割の解明に限界があった。さらに、CRMPの神経再生における機能がin vitroの実験で示唆されており、CRMPの神経発達と神経再生における役割を遺伝子改変マウスを用いてin vivoで検証している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題については、A,CRMPの神経発生における役割の解明、B,CRMPの神経再生への役割の解明とその応用、の2つの内容で研究を進めている。それぞれについて達成度を報告する。 A,CRMPの神経発生における役割の解明 2014年度は、CRMP1KO;CRNP2KI;CRMP4KOのtriple mutantの作成を行ない、大脳皮質構築についての解析を開始した。いわゆるlayer markerを用いた解析により、神経細胞移動障害があることが分かったが、詳細を解析中である。また、これらの遺伝子改変マウスとGFP-Mを交配して、神経細胞を可視化出来るマウスの作成も行っている。 B,CRMPの神経再生への役割の解明とその応用 CRMP4 遺伝子欠損マウスでは脊髄損傷後の機能回復が顕著に促進されているという結果が得られ、その回復メカニズムについて生化学・組織学的解析を行なった。CRMP4を欠損させることにより、マイクログリア・アストロサイトの活性化が大きく減少し、瘢痕組織形成が抑制されていた。また、神経再生が促進されていた。これらの成果を学会および学術誌に報告した(Nagai et al., Sci Rep 2015)。この研究成果はプレスリリースされ、広く報道された。現在、CRMP2KIマウスに関する解析を行ない、野生型との比較において、脊髄損傷後の機能回復が促進されているとの結果を得ており、詳細に検討している。こうした遺伝子改変マウスの解析とともに、薬剤を用いた脊髄損傷モデルの治療の検討を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
A,CRMPの神経発生における役割の解明 CRMP1,CRMP2,CRMP4の多重変異マウスについて、大脳皮質切片を作成し、Nissl染色による観察を行なう。詳細な解析として、BrdUを妊娠マウスに腹腔内投与によりbirthdateラベルし、BrdU染色を生後10日目で行なうことにより、大脳皮質神経細胞の移動を評価する。さらに、GFP-Mを導入したマウスで樹状突起形成やGolgi法によるスパイン形成などの解析を行なう。 B,CRMPの神経再生への役割の解明とその応用 CRMP2KIマウスの脊髄損傷後の回復について、行動学的解析(BMSスコア)を多数例で行なうとともに、損傷急性期、回復期、回復評価後に、組織学的評価および生化学的評価を行なう。具体的には、組織学的評価として、neurofilament, GAP43などの免疫染色、グリオーシスの評価としてGFAP(アストロサイトマーカー)とIba1(マイクログリアマーカー)の免疫染色を行なう。生化学的評価としてウエスタンブロットを行なう。neurofilament, GAP43, GFAPに加えて、CRMP1-5に対する抗体, CRMP2とCRMP4のリン酸化抗体などを用いて解析を行なう。CRMP2KIの結果を踏まえて、Cdk5やGSK3betaの阻害剤を用いた検討も合わせて行なう。 以上の検討で得られた研究成果を、学会や学術誌などで報告する。
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Causes of Carryover |
研究費使用については、ほぼ計画通り進めている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
予定通り進める。
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Remarks |
研究成果を早稲田大学よりプレスリリースしました。 「理工・大島研など 脊髄損傷における新たな治療標的タンパク質を特定 より特異的・効果的な神経再生医療に期待」
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