2014 Fiscal Year Research-status Report
知覚機能向上に伴う大脳皮質微小神経回路の形成基盤の解明
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26430047
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
足澤 悦子 生理学研究所, 行動・代謝分子解析センター, 特別協力研究員 (00446262)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 微小神経回路 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、豊かな環境で飼育された動物の知覚機能向上に伴って、大脳皮質における細胞系譜に規定される微小神経回路形成がどのような影響を受けるかを電気生理学的に解明することである。26年度は、細胞系譜に規定される微小神経回路がどのように発達するかを解析した。解析対象には、マウス大脳皮質バレル野の4層における興奮性神経細胞間シナプス結合を選択した。この領域におけるシナプス形成初期(生後9ー11日目)、中期(生後14-16日目)および後期(生後18-20日)に、バレル皮質4層の興奮性細胞二つから、同時ホールセル記録を行い、シナプス結合関係を検証した。細胞系譜の可視化には、緑色蛍光タンパク(GFP)を発現するiPS細胞を野生型マウスの胚盤胞に移植することにより行った。このキメラマウスにおいて、GFPを発現する細胞群は細胞系譜が同じ可能性が高く、またGFPを発現する細胞と発現しない細胞は、異なる細胞系譜で生まれた細胞である。GFP発現細胞間シナプス結合確率とGFPを発現する細胞と発現しない細胞間シナプス結合確率を比較したところ、生後9-11日では、細胞系譜が同じ細胞間結合と異なる細胞間結合の結合確率には差が見られなかった。しかし、生後14-16日には細胞系譜が同じ細胞間結合は有意に高くなった。生後18-20日には、細胞系譜が同じ細胞間結合確率は下がり、細胞系譜が異なる細胞間結合と同じくらいになった。つまり、細胞系譜が同じ細胞間結合においてのみ、発達に伴う結合関係の変化が見られたが、それに比べて、細胞系譜の異なる細胞間結合は、発達を通して、その結合関係に大きな変化は観察されなかった。以上の結果から、細胞系譜に規定される神経細胞結合が、発達に伴って形成されていることが明らかになり、今後、マウスの飼育環境の変化がどの段階の細胞系譜依存的神経結合関係に影響を与えるかを調べることが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウスの飼育環境が神経回路形成に与える影響を調べるために、発達に伴う神経回路形成の変化を明らかにすることができた。これによって、マウスの発達期において、どの段階の飼育環境の変化が神経回路形成に重要であるかを調べる基盤となり、重要な基礎的データである。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度明らかにした、発達に伴う細胞系譜依存的な神経回路形成をもとにして、マウスの飼育環境を豊かにした場合にこの回路形成がどのような影響を受けるかを検証する。
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Causes of Carryover |
当初予定していた動物の搬入を次年度に行うこととなったため、それに伴い次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
予定している遺伝子改変動物の搬入および飼育費に充てる。
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