2015 Fiscal Year Research-status Report
知覚機能向上に伴う大脳皮質微小神経回路の形成基盤の解明
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26430047
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
足澤 悦子 生理学研究所, 行動・代謝分子解析センター, 特別協力研究員 (00446262)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 微小神経回路 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究目的は、豊かな環境で飼育された動物の知覚機能向上に伴って、大脳皮質における細胞系譜に規定される微小神経回路形成がどのような影響を受けるかを電気生理学的に解析することである。これまで大脳皮質バレル野4層において、同一細胞系譜の星状細胞間には、異なる細胞系譜の星状細胞間に比べて有意に高頻度な双方向性結合が形成されていることを見出していた。その大脳皮質興奮性神経細胞の細胞系譜の可視化には、野生型のグリーンマウスから樹立したiPS細胞を用いて、野生型マウスから得られた胚盤胞に移植することでキメラマウスを作製した。近年、iPS細胞樹立において遺伝子変異が起きている可能性を示唆する研究が報告された。そこで、27年度は、複数のiPS細胞のラインを用いることで、これまで観察されていた細胞系譜依存的な双方向性シナプス結合が、iPS細胞のどのラインにおいても観察されるかを検証した。その結果、いずれのラインにおいても、細胞系譜特異的に形成される双方向性結合が観察され、この現象はiPS細胞におきる遺伝子変異が原因ではなく、細胞系譜に依存したシナプス結合であることが証明された。 また、同一細胞系譜間、異なる細胞系譜の神経細胞間、それぞれに形成されるシナプス結合強度にも違いが見られるかを検証した。その結果、まず一方向性シナプス結合および双方向性結合の二つの結合様式間において比較したところ、シナプス応答の振幅に有意な差は見られなかった。また、同一細胞系譜、および異なる細胞系譜の神経細胞間に形成されるシナプス応答について比較したところ、シナプス応答の振幅に有意な差は見られなかった。以上の結果から、神経細胞間の特異的なシナプス結合には細胞系譜が関係しているが、形成されるシナプス応答の強度には、細胞系譜に関係ないことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
27年度は、豊かな環境で飼育したマウスにおいて、神経結合関係を検証する予定であったが、細胞系譜可視化に用いるiPS細胞を複数ラインで検証する必要性が生じたため、予定がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで明らかにした、発達に伴う細胞系譜依存的な神経回路形成をもとにして、マウスの飼育環境を豊かにした場合、また逆にひげを切ることにより入力遮断をした場合に、この回路形成の発達がどのような影響を受けるかを検証する。
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Causes of Carryover |
当初予定していた動物の次年度に行うこととなったため、それに伴い次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
予定している遺伝子改変動物の搬入および飼育費に充てる。
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