2014 Fiscal Year Research-status Report
脂質代謝からみた悪性グリオーマの特性と幹細胞性維持機構
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26430056
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
鈴木 諭 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90294917)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | グリオーマ / 脂質代謝 / 糖代謝 / 免疫組織化学 / 細胞培養 / ウェスタンブロッティング |
Outline of Annual Research Achievements |
1)ヒトグリオーマにおける脂質代謝関連蛋白発現に関する検討 本研究に先立ち、ヒトグリオーマ細胞株U373、U87および 各種glioma外科標本41例(IDH1野生型20例、R132H変異 21例)において脂質代謝関連蛋白FASN、CPT1Cの発現を免疫染色を用いて調べたところ、IDH1変異の有無に関わらず、CPT1Cが37例で核に発現し、FASNが39例で細胞質に発現していた。この結果よりグリオーマ細胞では脂肪酸の合成と分解・利用の両方が亢進していることが示唆された。そこで、平成26年度は、同一のサンプル群に対して、さらなる脂肪酸代謝の指標として、ACC1およびリン酸化ACC1に対する免疫染色を行った。その結果、ACC1はグリオーマ細胞の胞体に分布したが、リン酸化ACC1はCPT1Cと同じく核に移行していた。今後のこれらの蛋白の機能的連関の解析の基盤となる新知見が得られた。 2)脂質代謝動態の解析に用いるヒトグリオーマ細胞株の調整 細胞培養に用いる液体培地中の血清濃度やグルコース濃度はグリオーマ細胞の糖代謝や脂質代謝動態に大きな影響を及ぼすと考えられる。通常の培養条件では細胞の安定的な増殖のためにこうした因子が過剰に供給されているため、代謝経路への実験的介入の条件設定を困難にしている。そこで、ヒトグリオーマ細胞株U373とU87を低血清濃度、低グルコース濃度の環境で培養して馴化した。その結果、2%血清、17.5mMグルコースの条件で安定的な増殖を得られることが判明した。今後のin vitro実験に有用な材料を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グリオーマ細胞における脂質代謝動態について今後の機能的解析の基盤となる重要な基礎的データや実験材料の準備を整えることが出来たため。
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Strategy for Future Research Activity |
1)低血清,低グルコース条件下のグリオーマ細胞の脂質代謝動態の解析:初年度に決定した低血清、低グルコース条件下の培養において、グリオーマ細胞における脂質代謝関連蛋白の発現解析を行う。 2)リン酸化ACC1およびCPT1Cの核内移行の分子機構と生物学的意義の解析:ACC1は本来細胞質内で脂肪酸合成に関わっており、リン酸化されることによりその活性が失われることが知られている。ACC1のリン酸化酵素であるAMPKを活性化するメトホルミンやAICARを非腫瘍性アストロサイトおよびグリオーマ細胞の培地に加え、免疫染色とwestern blotによって細胞質分画と核分画におけるACC1およびリン酸化ACC1、CPT1Cの発現量の変化を調べ、リン酸化ACC1およびCPT1Cの核内移行の分子機構を解析し、その腫瘍における生物学的意義を検討する。 3)グリオーマ細胞株からの腫瘍幹細胞分離と脂質代謝動態の検討:グリオーマ細胞株から腫瘍幹細胞を分離し、脂質代謝関連遺伝子および蛋白の発現を解析することにより、グリオーマ幹細胞の代謝の特性を明らかにする。 4)Metabolic stress による幹細胞性の導入と脂質代謝動態の検討:グリオーマ幹細胞は低脂質環境、低グルコース環境、低酸素環境、化学療法剤の存在下など多様なストレス環境を生き延びる能力を備えていると考えられる。そこで、こうしたストレス環境下で培養したグリオーマ細胞と幹細胞性の関係を検討し、グリオーマ幹細胞の代謝特性の環境との関係を明らかにする。 5)グリオーマ幹細胞の動物への移植実験:脂質代謝動態の判明したグリオーマ幹細胞をヌードマウスの脳に移植し、親株との比較の下にin vivoにおける増殖、進展形式と脂質代謝関連蛋白の発現との関連を組織学的に検討し、脂質代謝がグリオーマの生体脳における生物学的動態におよぼす影響を解析する。
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Causes of Carryover |
研究遂行上人件費の支出が必要となったため、これを賄うために当初支出を予定していた消耗品について効率的な使用、購入を心がけたところ、全体の支出額が当初の見込みを下回ったもの。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初計画の通り研究遂行に不可欠な抗体・試薬類、ディスポ器具、消耗品の購入および実験動物の購入・飼育に充てる。また、多少の次年度使用額が生じたため、それに応じて受託解析の検体数を増やす予定である。
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Research Products
(2 results)