2016 Fiscal Year Research-status Report
アルツハイマー病:食物由来のアミロイド-β蛋白抑制物質の併用療法と環境療法の探索
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26430058
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
森 隆 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (60239605)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 神経病理学 / アルツハイマー病 / アミロイドβ蛋白 / 遺伝子改変マウス / フェノール化合物 / 抗炎症効果 / 抗酸化効果 / シナプス関連蛋白 |
Outline of Annual Research Achievements |
食物由来フェノール化合物:1)ferulic acid(Aβ蛋白産生系を抑制する化合物)、2)octyl gallate(非Aβ蛋白産生系を亢進する化合物)の併用投与を行った。アルツハイマー病の脳アミロイド症のモデルマウス(PSAPPマウス)に、12ヵ月齢から3ヵ月間、0.2 mL(総投与量)/mouse(30 mg/kg)を24時間毎に経口投与して、その効果を単独投与群そして対照群(Wild-typeマウス群)と比較検討した。併用投与すると、PSAPPマウスで観察される新規物体認識障害、探索行動における過活動、空間作業記憶障害、短期記憶障害などの行動学的障害が単独投与群より有意に改善し、加算効果を示した。単独投与群でも対照投与群と比較して、行動学的障害が有意に改善した。両薬剤を併用投与したPSAPPマウスは、単独投与と比較して、脳実質のAβ沈着及び脳内Aβレベルが有意に減少した。これらの効果は、アミロイド前駆体蛋白の段階的酵素切断への加算的な干渉に関連していた。さらなる重要な有効性として、これらの薬剤の併用投与は一剤投与よりも、β-アミロイド斑周囲のgliosisを有意に抑制、pro-inflammatory cytokines(TNF-α・IL-1β)のmRNAレベルも有意に沈静化した。抗酸化酵素(SOD1・GPx1)のmRNAレベルを低下した。神経線維末端のシナプス関連蛋白であるsynaptophysinの免疫染色性が海馬のCA1領域、皮質のentorhinal cortex領域で有意に改善した。以上の結果は、併用投与が、行動学的障害及び脳アミロイド症の病態軽減に加算効果がある重要なデータが得られたことを示していることに加えて、これらの病態改善にプラスに影響した抗炎症効果、抗酸化効果、シナプス関連蛋白の改善の加算効果も重要な役割を果たしているものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26-27年度に実施した継続研究として、平成28年度はPSAPPマウスそしてwild-type littermateへの12ヵ月齢から3ヵ月間(15ヵ月齢まで)の胃ゾンデを用いた24時間毎の各群マウスへの経口投与を完了した各群マウスから摘出された脳を用いて、抗炎症効果、抗酸化効果、神経末端のシナプス関連蛋白に関して、病理組織学的そして生化学的解析を実施した。両化合物を併用投与したPSAPPマウスは、単独投与と比較して、gliosis(astrogliosis・microgliosis)を有意に抑制、pro-inflammatory cytokines(TNF-α・IL-1β)のmRNAレベルも有意に沈静化した。抗酸化酵素(SOD1・GPx1)のmRNAレベルも低下した。神経線維末端のシナプスの変化を免疫組織化学的に解析し、シナプス関連蛋白であるsynaptophysinの免疫染色性(immunoreactivity)が海馬のCA1領域、皮質のentorhinal cortex領域で有意に改善した。即ち、抗炎症効果、抗酸化効果、神経末端のシナプス関連蛋白の改善に関しても加算効果があることが明らかになった。以上の得られたデータから、1)ferulic acid(Aβ蛋白産生系を抑制する化合物)2)octyl gallate(非Aβ蛋白産生系を亢進する化合物)を組み合わせたセクレターゼ標的薬剤の併用投与が、アルツハイマー病の病態で最も重要視される行動学的障害及び脳アミロイド症の病態軽減に加算効果を示す重要なデータが得られたことを示していることに加えて、これらの病態改善にプラスに影響した抗炎症効果、抗酸化効果、シナプス関連蛋白の改善の加算効果も重要な役割を果たしているデータが得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である平成29年度においては、平成26-28年度に得られたデータの外部公表に向けて、論文投稿を行う予定でいる。この際、追加実験あるいは再実験・解析が必要となるため準備する。さらに、これまで有効性が明らかにされている食物由来のフェノール化合物の新たな併用投与の組み合わせによる有効性・加算効果を探索する予定でいる。即ち、1)ferulic acid(Aβ蛋白産生系を抑制する化合物)、2)epigallocatechin gallate(非Aβ蛋白産生系を亢進する化合物)の併用投与によるアルツハイマー病の病態改善効果を検討する予定でいる。認知機能障害の改善・軽減効果への相乗効果を研究する予定でいる。アルツハイマー病の脳アミロイド症のモデルマウス(PSAPPマウス)そしてwild-type littermateへの12ヵ月齢から3ヵ月間、24時間毎の各群マウスへの経口投与を行う予定でいる。投与開始時点そして3ヵ月間の投与後に、行動学的解析を行い、単独投与群そして対照群と比較検討する予定でいる。行動学的解析は、新規物体認識試験、Y字迷路試験、放射状水迷路試験を実施する予定でいる。これらの行動学的解析により、PSAPPマウスで観察される新規物体認識障害、探索行動における過活動、空間作業記憶障害、短期記憶障害などの行動学的障害の軽減あるいは改善効果を見る。
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Research Products
(3 results)