2015 Fiscal Year Research-status Report
ATF6ノックアウトマウスを用いたALSの病態解明
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26430069
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
堀 修 金沢大学, 医学系, 教授 (60303947)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 神経変性 / 小胞体ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病態形成に細胞内小器官の一つ小胞体の障害、すなわち小胞体ストレスが関与している可能性が示唆されている。しかし、どの時期に、どの細胞で小胞体ストレス、並びに小胞体ストレス応答(UPR)が重要な役割を果たしているかについては明らかにされていない。そこで、我々はまず、ALSモデルマウスであるG93A SOD Tgマウス(以下、ALSマウス)を用いて、小胞体ストレス関連遺伝子であるGRP78の発現を検討した。その結果、同マウスにおいてはALS発症に先んじてGRP78の発現が、特に脊髄の運動神経で上昇することを認めた。次に、UPRの主幹転写因子であるATF6を欠損したマウス(ATF6 KOマウス)とALSマウスの交配を行い、得られたATF6 KO / ALSマウスの表現型を解析した。その結果、①同マウスにおいてはALSマウスに比し早期からALSを発症した。更に、形態学的、生化学的検討を行った結果、②SOD蛋白質の凝集を早期から運動神経軸索に認め、それに引き続いて、③ユビキチン(Ub)化蛋白質の集積、及び④オートファジーの更新を認めた。更に、⑤ALSマウスに比し脊髄運動神経の変性を早期から認めた。一方、⑥アストロサイト、ミクログリア、オリゴデンドロサイトなどのグリア細胞の形態や数については、ALSマウスとATF6 KO / ALSマウスとの間で有意な差は認めなかった。つまり、ATF6の欠損は細胞自律的(cell-autonomous)に神経変性を促進する可能性が示唆された。⑦実際、海馬において、ATF6の欠損は細胞自律的、Ca依存的にカイニン酸誘導性神経細胞死を増強することを確認した。 これらの結果から、ALSマウスでは早期から運動神経における小胞体ストレス応答がCa恒常性維持を介して、その病態制御に重要な働きをしていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ATF6 KO / ALSマウスの解析は、これまでの所、順調に進行し、既に以下の事実を明らかにした。体重減少を指標に解析した所、①同マウスにおいてはALSマウスに比し早期からALSを発症した。更に、形態学的(免疫組織化学)、生化学的(qPCR、ウエスタンブロット)検討を行った結果、②SOD蛋白質の凝集を早期から運動神経軸索に認め、それに引き続いて、③ユビキチン(Ub)化蛋白質の集積、及び④オートファジーの更新を認めた。更に、⑤ALSマウスに比し脊髄運動神経の変性(脱落)を早期から認めた。一方、⑥アストロサイト、ミクログリア、オリゴデンドロサイトなどのグリア細胞の形態や数については、ALSマウスとATF6 KO / ALSマウスとの間で有意な差は認めなかった。⑦ATF6の欠損は、細胞自律的、Ca依存的にカイニン酸誘導性神経細胞死を増強することを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
特に以下の点について重点的に研究を推進する。 ALSマウス及びATF6 KO / ALSマウスにおける生存率:これまでの研究より、ATF6 を欠損することでALSを発症が早まることが明らかになったが、生存期間で見ると、ALSマウス及びATF6 KO / ALSに有意な差は認めなかった。その原因として、①小胞体ストレス応答のうち他の経路、例えばIre1、Perk、ATF6b経路が代償しているのではないか、或いは、②ATF6 KOマウスで認められるグリアの活性化抑制が炎症抑制を介して神経保護的に働いているのではないか、という仮説を立て、それら経路の活性化についてqPCR、ウエスタンブロット、免疫組織化学を用いて検討する。
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