2014 Fiscal Year Research-status Report
質量顕微鏡によるオリゴデンドロサイト分化マーカーの可視化
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26430077
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
和田 幸恵(平原幸恵) 関西医科大学, 医学部, 助教 (70457969)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | オリゴデンドロサイト / スルファチド / 質量顕微鏡 / 発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
オリゴデンドロサイト分化過程は、細胞表面に様々な脂質マーカーを発現する。脂質検出を得意とする質量顕微鏡による解析は、生体内オリゴデンドロサイトでの糖脂質各種の分布を詳細に解析する有効なツールである。本研究は、質量顕微鏡の発生学への応用を試みる。本年度は、「質量分析イメージングによるオリゴデンドロサイト系譜の追跡」を行った。マウス胚発生過程、オリゴデンドロサイト発生母地である脊髄腹側に焦点をあてオリゴデンドロサイト特異的脂質(スルファチド)を対象に、質量顕微鏡にてオリゴデンドロサイト細胞系譜を確定した。遂行された実験と結果は以下の通り。 1)マウス胚、13日胚~19日胚の脊髄組織に対し、質量顕微鏡による解析をおこなったところ、17日胚脊髄腹側部特異的にC18スルファチドのピークが検出された。2)質量分析の結果は、オリゴデンドロサイト前駆細胞特異的マーカーOlig2 の免疫染色像と一致した。3)成熟オリゴデンドロサイトが占めるマウス19日胚脊髄では、C22-OH、C24-OH、C24:1-OHスルファチドが同領域で発現していた。成獣脊髄においては、C24:1-OHスルファチドが優位であった。4)ラット由来オリゴデンドロサイト前駆体培養細胞から、O4抗体陽性/O1抗体陰性として標識されるプロオリゴデンドロブラストをフローサイトメトリーにより回収して質量分析を行った結果、C18スルファチドが優位に検出された。5)これらの結果は、プロオリゴデンドロブラストでは、脂肪酸の短いC18スルファチドが使われ、オリゴデンドロサイト発生過程、年齢において脂肪酸の長さは変化していくことを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
質量顕微鏡を使ったマウス胚におけるオリゴデンドロサイトの発生の追跡に関しては順調に行うことができ、このツールをオリゴデンドロサイトの発生系譜解析に用いることは可能であると判断できる。しかし、オリゴデンドロサイトは多数の脂質分化マーカーを持っていると考えられるので、今回行ったスルファチド群のみに限らず、他のガングリオシド系の解析を進めていく必要がある。従って、「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
オリゴデンドロサイト前駆細胞と成熟オリゴデンドロサイトに焦点をあてる。前駆細胞の分化マーカーとして、c経路ガングリオシド、成熟オリゴデンドロサイトのマーカーとしてセレブロシドを指標とし、質量顕微鏡を使った細胞系譜の同定を進める。 c経路ガングリオシドは、脳室周囲増殖領域の神経新生能のある領域に発現し、グリア系譜にコミットした幼若な前駆細胞のマーカーと考えられている。Human Metabolome Database によるとそれぞれのc経路ガングリオシドは30種類の脂肪酸の長さの違う構造をもつ。計120種類のガングリオシドが考えられるがオリゴデンドロサイト前駆細胞が保持しているガングリオシドがどのタイプによるものか、オリゴデンドロサイト前駆細胞から後期前駆細胞に伴い脂質のタイプが異なるかを解析する。これらは、連続切片において、オリゴデンドロサイト前駆細胞のマーカーとして使われるOlig1, PDGFR alpha, NG2陽性細胞との対応を検討する。
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Causes of Carryover |
計画は、オリゴデンドロサイトは多数の脂質分化マーカーを同時に解析予定であったが、脂質によって質量分析の条件が違っており、条件検討を進めるのに時間を要した。そのため、スルファチド以外の脂質の解析は次年度に行う予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
他のマーカーである脂質、ガングリオシド系脂質、セレブロシドに焦点をあてて解析予定である。解析に必要な脂質標品、比較するオリゴデンドロサイト前駆体細胞の免疫染色解析に必要な抗体、マウスの購入を行う。
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Research Products
(4 results)