2014 Fiscal Year Research-status Report
Gi/o共役型受容体が仲介するシナプス前抑制における多様性の分子的基盤
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26430079
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
佐竹 伸一郎 生理学研究所, 生体情報研究系, 助教 (30360340)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
深澤 有吾 福井大学, 医学部, 教授 (60343745)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 小脳 / 顆粒細胞 / 分子層介在ニューロン / 興奮性シナプス後電流 / スライスパッチクランプ法 / グルタミン酸輸送体 |
Outline of Annual Research Achievements |
ラット小脳顆粒細胞(上行性線維)のペアパルス刺激(30‐100ミリ秒間隔)に伴い、分子層介在ニューロン(籠細胞)から記録される興奮性シナプス後電流(EPSC)は、2発目の振幅値と減衰時定数(τ)が一過性に増大する。これまでに、減衰時間のペアパルス増強(paired pulse prolongation of the EPSC decay, PPPdecay)は、シナプス小胞の多重性放出に伴う、神経伝達物質グルタミン酸(Glu)のシナプス間蓄積によって引き起こされていることを報告した。多重性放出とシナプス間蓄積の分子的基盤を検討するため、以下の2つの課題に取り組んだ。
【多重性放出の発現メカニズムの検討】電位依存性Ca2+チャネルのサブタイプ選択的阻害薬ならびに細胞膜透過型の緩除結合性Ca2+キレーターEGTA-AMを用いて、PPPdecayを指標に多重性放出の発現メカニズムを検討した。多重性放出は(1)複数のCav2.1チャネルを介して軸索終末に流入したCa2+が流入部位から周囲に拡散して蓄積すること(2)蓄積したCa2+がチャネル近傍に局在するシナプス小胞/Ca2+センサー複合体のみならず(3)遠位の小胞/センサー複合体にも作用することによって惹起されたことを示唆する結果を得た。
【Caged-Gluを用いたグルタミン酸輸送体機能評価システムの構築】グルタミン酸輸送体(興奮性アミノ酸輸送体; excitatory amino acid transporter, EAAT)が担うGlu取り込み機構(回収機構)は、Gluのシナプス外拡散・蓄積過程に大きな影響をおよぼす。この影響を検討するため、caged-Gluの光遊離によりEAATのGlu輸送機能を評価する実験系の構築を試みた。脳スライス標本において、caged-Gluの光遊離条件(光量、照射時間、caged-Gluの濃度ならびに投与時間)や投与する受容体/輸送体阻害薬(種類、投与濃度)の検討を行い、EAAT電流記録の最適化をした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していた課題に予定通り取り組み、PPPdecayが引き起こされるメカニズムの一端を解き明かすことができた。また、caged-Gluを用いたEAAT機能評価システムの構築を試み、光照射時間や投与する受容体/輸送体阻害薬の種類・濃度など最適な実験条件を確立することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、多重性放出(PPPdecay)の発現メカニズムを検討する過程で、Gi/o共役型受容体が仲介するシナプス前抑制には、受容体サブタイプに依存した複数の様式が存在することを見出している。Gi/o共役型受容体各サブタイプとCav2チャネルサブタイプの機能的連関や受容体とシナプス小胞/Ca2+センサー複合体の局在関係を詳しく解析することにより、シナプス前抑制に多様性が生み出されるメカニズムの解明を目指す。また、新たに確立した光遊離実験系を用いて、EAATが『Gluのシナプス外拡散・蓄積過程の制御因子』としてPPPdecayに関わる可能性を検討する。
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Causes of Carryover |
実施計画の通り、滞りなく研究を遂行することができた。そのため、少額ながら次年度への繰越を残すことができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
光遊離実験では、高価な試薬(受容体・輸送体阻害薬、caged-Gluなど)を脳スライス標本に長時間かつ高濃度で灌流投与し続ける必要性がある。こうした試薬類の購入に充てたい。
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