2015 Fiscal Year Research-status Report
Gi/o共役型受容体が仲介するシナプス前抑制における多様性の分子的基盤
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26430079
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
佐竹 伸一郎 生理学研究所, 基盤神経科学研究領域, 助教 (30360340)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
深澤 有吾 福井大学, 医学部, 教授 (60343745)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 小脳 / 顆粒細胞 / 分子層介在ニューロン / 興奮性シナプス後電流 / スライスパッチクランプ法 / グルタミン酸輸送体 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに、ラット小脳顆粒細胞-分子層介在ニューロン間グルタミン酸(Glu)作動性シナプスにおいて、Gi/o共役型受容体が仲介するシナプス前抑制には複数の様式が存在することを報告してきた。シナプス前抑制に多様性が生み出されるメカニズムを解き明かすため、以下の2つの課題に取り組んだ。
【逆行性脱興奮(depolarization-induced suppression of excitation, DSE)の分子的基盤】顆粒細胞-分子層介在ニューロン間シナプスでは、介在ニューロンの一過的な脱分極に伴い、内因性カンナビノイドと前シナプス性CB1受容体に依存した逆行性脱興奮(即ち、Glu入力の抑制)が惹起される。CB1受容体の活性化に伴い顆粒細胞のGlu放出が抑制されるメカニズムを薬理学的手法により検討し、Cav2.2(N-type)チャネルならびにCav2.3(R-type)チャネルが関与していることを示唆する結果を得た。
【神経伝達物質の放出過程とCa結合タンパク質の関係】Cav2チャネル作用薬roscovitineと細胞膜透過性Caキレート剤(EGTA-AMならびにBAPTA-AM)を用いて、シナプス小胞の活動電位依存性放出と軸索終末Caマイクロドメインの関係を追究した。顆粒細胞-プルキンエ細胞間Glu作動性シナプスと分子層介在ニューロン(籠細胞、星状細胞)-プルキンエ細胞間GABA作動性シナプスでは、各Caキレート剤がCav2.1チャネルにより仲介される神経伝達物質放出におよぼす影響は著しく異なっていた。顆粒細胞と分子層介在ニューロンの軸索終末に発現するCa結合タンパク質の違い(calretinin, parvalbumin)と関係があると推定し、さらに検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り研究課題に取り組み、カンナビノイドCB1受容体が仲介するシナプス前抑制に関して分子機構の一端を解き明かすことができた。また、Cav2.1チャネルが仲介する神経伝達物質放出過程において、Ca結合タンパク質(Ca buffer)が重要な役割を担っていることを見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、Gi/o共役型受容体各サブタイプとCav2チャネルサブタイプの機能的連関やシナプス小胞/Caセンサー複合体の局在関係について検討を進めていくことにより、シナプス前抑制に多様性が生じるメカニズムならびにその生理的意義の解明を目指す。
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Causes of Carryover |
実施計画に従い、遅滞なく研究を遂行することができた。そのため、少額ながら次年度に繰越を残すことができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
Caged glutamateを用いた光遊離実験を予定している。この実験では、高価な試薬(caged glutamate、受容体・輸送体阻害薬など)を脳スライス標本に長時間かつ高濃度で灌流投与し続ける必要性がある。これら試薬類の購入に充当したい。
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