2015 Fiscal Year Research-status Report
ヒトβ3チューブリン変異が引き起こす神経発達異常のメカニズム解明
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26430080
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
箕浦 逸史 国立研究開発法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 研究員 (70373371)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | チューブリン / 外眼筋繊維症 / 神経軸索形成 / レスキュー |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト外眼筋繊維症の原因として同定された変異β3チューブリンが神経軸索形成異常を引き起こす分子メカニズムを理解する実験を行なった。昨年度得られた結果では、ヒト外眼筋繊維症の原因となるβ3チューブリン変異の場所の1つ、 R262 がキネシンとの相互作用に重要であること、更に、その結合をキネシン L12 ループの変異によってレスキューできることが明らかとなった。 今年度はこの結果に基づき、チューブリン-キネシン相互作用が軸索形成異常にどのように関わっているか理解するため、マウス胎児脳でこれらの遺伝子を発現させ、神経の成長を解析した。その結果、β3チューブリン変異により脳梁の伸長が遅くなり脳梁が短くなること、更にレスキューできる変異キネシンを同時に発現させると脳梁の長さが回復することを見いだした。この脳梁は大脳皮質細胞から伸長してくる軸索の束であるため、マウス大脳皮質の初代培養細胞でもこれらの遺伝子を発現させたところ、これらの遺伝子は軸索の伸長に関わることが明らかとなった。 すなわち、正常な神経細胞にはβ3チューブリンとキネシンとの相互作用により軸索伸長を促進するメカニズムがあり、変異体ではそれが阻害される結果、外眼筋繊維症の患者に観察される脳梁の異常が引き起こされることが確かめられた。この成果は Nature Communications 7 10058 (2016) として公表した。同時に、この成果を所属機関からプレスリリースし、科学新聞やネイチャージャパンのウェブサイトに、日本語インタビュー記事として掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は、マウス胎児への遺伝子導入実験を行ない結果を得る予定であったが、ほぼ予想通りの結果が順調に得られたため、加えて、細胞レベルでの解析も行ない、微小管-キネシンの相互作用が神経軸索伸長に重要であることを確かめることができた。さらに、ここまでの成果を論文として公表するに至った。
一方、構造解析については予備実験から技術的な困難が明らかとなったため、回避する方法を検討しているところである。そのような問題にも関わらず、全体としては今年度は当初の計画以上に研究を進展させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
外眼筋繊維症やその他の先天性神経疾患を引き起こす原因として、チューブリン変異によって引き起こされる微小管とキネシンとの相互作用の異常にとどまらず、チューブリンの重合能に異常がおこるという可能性も指摘されている。このメカニズムを明らかにするため、結晶構造解析を行なう予定であったが、必要な結晶を得るのが困難なため、電子顕微鏡観察と微小管のダイナミクス測定など別の手法で構造を明らかにする予定である。また、微小管の重合能を解析することにより、チューブリン変異と微小管のダイナミクスとの関係を明らかにしてゆく予定である。
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Causes of Carryover |
前年度予定していた結晶構造解析の予備実験が頓挫し計画を見直したため、その費用を使わなかった。また、国際会議で発表することを見込んでいたが、論文出版前に成果を公表することを見合わせた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
結晶構造解析の代わりに、電子顕微鏡による構造解析を行なうめどが付いたため、次年度は東京大学微細構造解析プラットフォームの共用設備を有償で借りて研究を行なう予定であり、繰り越した予算をそのために使用する。また、次年度5月の国際会議で成果を公表するため、繰り越した出張費用を使用する計画である。
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Research Products
(3 results)