2015 Fiscal Year Research-status Report
マウス胎児期低栄養により誘導される仔の発達障害様行動感受性遺伝子の探索
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26430098
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
古瀬 民生 国立研究開発法人理化学研究所, バイオリソースセンター, 開発研究員 (60392106)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 胎児期栄養 / マウス / 行動 / エピジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題におけるこれまでの研究で、妊娠期に母獣が低タンパク食を与えられたマウスの仔(タンパク質制限食暴露群)は、離乳後に発達障害様の行動表現型とともに、脳において特徴的な遺伝子の発現パターンを示すことを明らかにしてきた。また、これらのマウスの脳組織のゲノムメチル化を網羅的に調べたところ、それぞれの群で異なるメチル化パターンを示した。また、母体に与える低タンパク食に通常の5倍量の葉酸を添加することによりメチル化の変化に改善が見られた。タンパク質制限食暴露群の脳における発現とメチル化アレイ解析おいて標準食群と比較して発現量・メチル化が有意に低下・増大した遺伝子群に関し、The Database for Annotation, Visualization and Integrated Discovery (DAVID)(http://david.abcc.ncifcrf.gov/)と呼ばれる発現アレイデータのアノテーション情報の解析データベースを用いて重要な遺伝子パスウェイの特定を行い、離乳後に発達障害様の行動表現型に関与する遺伝子の絞り込みを行ってきた。本年度はこれらの遺伝子の中でRora、Tgm3、Ntrk2の3遺伝子に関してノックアウトマウスを作出した。この中で、Rora遺伝子変異マウスに関しては網羅的行動解析が終了し、恐怖条件付け試験における学習障害が確認され、有力な候補遺伝子の一つであることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究においてはこれまでの研究結果を踏まえ、マウス胎児期における母体のタンパク質制限食暴露により誘導された仔の発達障害様行動感受性遺伝子の探索を行うとともに、脳組織における異常を明らかにする事を目的としており、具体的には、下記の3点を最終的な目標としている。 1. 母体のタンパク質制限食暴露により脳組織において発現量とプロモーターメチル化に差の生じた遺伝子に関して変異マウスを作製し、発達障害モデルマウス評価に特化した行動表現解析系に供し、遺伝子機能を明らかにする。 2. 発達障害様行動を示した変異マウスに関してはより詳細な脳組織解析を行う。 3. これらのデータを統合し、マウス胎児期低栄養により誘導された仔の発達障害様行動の感受性遺伝子の探索を行うとともに、脳組織において引き起こされる機能異常を明らかにする。 上記の1に関しては、胎児期低栄養暴露により発現量もしくはプロモーター領域のメチル化が変化した遺伝子群に関し、機能のアノテーション解析により候補遺伝子の絞り込みを行うことにより完了した。また、平成27年度はこれらの遺伝子の中でRora、Tgm3、Ntrk2の3遺伝子に関してノックアウトマウスを作出した。Rora遺伝子ノックアウトマウスに関しては網羅的行動表現型解析において学習異常を検出した。Tgm3、Ntrk2に関しては現在、マウスの増産を行っており平成28年度内に網羅的行動解析を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
Rora遺伝子ノックアウトマウスと同様に、作製したTgm3、Ntrk2変異マウスに関して自閉症様表現型の検査方法として知られているCrawleyの3チャンバー社会行動試験とともにオープンフィールド試験、ホームケージ自発活動試験、明暗箱往来試験、Y字迷路試験、恐怖条件付け学習試験、プレパルス抑制試験を行い、多面的な行動表現型を評価する。 一方、母体に与える低タンパク食に通常の5倍量の葉酸を添加することにより仔の脳組織におけるゲノムメチル化の変化に改善が見られたことから、葉酸代謝の異常が発達障害様表現型に増悪因子として関与することが考えられる。このため、新たに葉酸代謝に関連する遺伝子をノックアウトしたマウスを母とする仔の表現型解析を計画している。具体的にはTyms (Thymidylate synthase)遺伝子ノックアウトマウスをすでに作出しており、この変異体と野生型の雌個体を仮親として野生型受精卵の胚移植を行い、生まれてきた仔の行動表現型を上記の網羅的手法を用いて比較することにより、母体の葉酸代謝と行動異常との相関を明らかにする予定である。これらの仮親となるマウス系統に関しては、葉酸、メチオニンの代謝経路として知られているone carbon metabolismの機能異常の指標となる血中のホモシステイン、S-アデノシルメチオニン等をHPLC法で測定し、母体の代謝異常の評価を行う事を計画し、測定系の確立を行っている。
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Causes of Carryover |
候補遺伝子のノックアウトマウス作出に関して、当該3系統が全て国際コンソーシアムにおいて作製されてデポジットされていたため、ターゲティングベクター、ES細胞の作製等が必要なくなった。このため2015年度の支出が計画よりも削減されたため、残額を次年度に使用することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年度の残額に関し、表現型解析用マウスの飼料購入に充当するとともに、葉酸代謝関連物質の定量用の消耗品を購入するものとする。
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