2014 Fiscal Year Research-status Report
マウス内耳の細胞内カルシウム動態観測による加齢性難聴の解析基盤構築
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26430099
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
美野輪 治 独立行政法人理化学研究所, バイオリソースセンター, 開発研究員 (00181967)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 加齢性難聴 / カルシウム / ENU-ミュータジェネシス / ミュータント / マウス変異体 / マウスモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
加齢性・老人性難聴の増加に伴い、その詳細な発症機構解析のためにはマウスモデルの必要性が非常に高いにもかかわらず、加齢進行性難聴のマウスモデルの詳細な機構の解析は例が少ない。本研究では明瞭に進行性聴覚障害の表現型を示す変異体マウスを用い、(1)継時的な表現型記述と組織学的解析を実施する事により、加齢性・老人性難聴モデルとしての意義を検討するための基礎的知見を集積する事を目的とする。また、(2)細胞内カルシウム動態異常が加齢性聴覚障害における細胞変性の主要な原因一つであるという仮説を基に、変異有毛細胞のex vivo での生理学的解析法によりカルシウム動態を観測するシステムを開発し、その動態異常と進行性難聴の関係を明らかにする事を目指す。 本年度は、上記(1)の目的の為に主にPmca2変異体4系統の継時的な表現型解析、組織学的解析を実施した。これら4系統はPmca2 遺伝子上のmissense 変異による新しいalleleを伴い、何れも加齢性の聴覚閾値上昇を示した。各 Pmca2 遺伝子産物のアミノ酸置換に応じて表現型に差異が認められ、Early-Late phase (5-20w~) の聴覚閾値上昇率の順序は、 Late phaseの細胞障害進展速度の差異と一致した。 Pmca2 変異体のEarly phase(-5w)における閾値の上昇は細胞死に先行するが、引き続き起こる有毛細胞とラセン神経節細胞の細胞死の進行により、各系統の 加齢性難聴が異なる速度で増悪すると考えられた。内有毛細胞、外有毛細胞、支持細胞、ラセン神経節細胞、神経繊維束の変性・死滅は、それらのコルチ器における局在個所(基底―頂回転)に応じて、短時間の間に同期して起こる様に見え、各事象間の因果関係(細胞間相互作用)は細胞死の機構を明らかにする上で重要であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理化学研究所の遺伝変異マウスのリソースの中で、進行性聴覚障害の表現型を示す複数の遺伝性マウス Pmca2 変異体を用い、内耳における基礎的な組織形態学的、生理学的解析を継時的に実施する事により、加齢性内耳障害の記述、機構推定を行うためのシステムを構築した。これを用いる事により、難聴進展過程において、聴覚機能低下のフェーズと細胞変性,細胞死のフェーズを識別する方法を開発し、加齢性・老人性難聴モデルとしての意義を更に詳細に検討する事が可能となる。
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Strategy for Future Research Activity |
理化学研究所の遺伝変異マウスのリソースの中の、その他の加齢性難聴表現型を示す系統について解析を進めると同時に、聴覚機能低下のフェーズと細胞変性,細胞死のフェーズを識別する方法を探索する。また、細胞内カルシウム動態異常が加齢性聴覚障害における細胞変性の主要な原因一つであるという仮説に基づき、変異体有毛細胞のex vivo での生理学的解析法によりカルシウム動態を観測するシステムの構築を試みる。
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Causes of Carryover |
物品の購入において、合見積りにより当初予定額より低価格での購入が可能となったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
試薬の追加購入に充当する。
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