2014 Fiscal Year Research-status Report
染色体分配の正常化による加齢マウス卵子の品質改善の試み
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26430100
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
越後貫 成美 独立行政法人理化学研究所, バイオリソースセンター, 専任技師 (40373287)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | マウス / 発生工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、加齢による卵子の質の低下とそれにともなう不妊や流産、新生児の疾患が社会的に問題になっている。卵子の質の低下には、細胞質の劣化および染色体の異常の2種類が原因と考えられている。本研究ではマウスをモデルとして、加齢による卵子の質を、顕微操作等によらない、非侵襲的方法にて染色体の改善を図ることで向上させることを目標とした。 まず最初に加齢卵子の質を確認するため、老齢(8-15ヶ月齢)マウスより採取したMII期卵のホールマウント標本を作製したところ、MII紡錘体の赤道面から離脱した姉妹染色分体が多くの卵子で確認された。また、老齢マウス卵子のGV期からMII期への発生をライブイメージングにおいて観察したところ、ヒストンアセチル化の異常(高アセチル化)が確認された。次に2-3ヶ月齢マウスGV期卵に、RNA干渉により脱アセチル化酵素HDAC活性を減少させたところ、HDAC8を減少させた卵子ではMIIへの発生後、ヒストン高アセチル化が確認された。さらにそれら卵子のホールマウント標本を作製し染色体本数を確認したところ、正常の2n=20より多い、あるいは少ないサンプルが確認された。 以上の結果より、卵子GV期におけるヒストンアセチル化の異常によって姉妹染色分体の緩みが生じ、結果的に染色分配の異常に繋がる可能性が示唆された。また同様の現象が老齢マウスの卵子でも生じていることにより、受精がうまく行かない可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウスGV卵を用いたHDACのRNA干渉により、GV期に起きたヒストンアセチル化の異常がMII期における染色体分配の異常に繋がる可能性が示された。この現象は老齢マウス卵の異常を実験的に再現した結果となった。本年度で得られた結果をもとに、次年度以降メカニズムの解明および改善を試みる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究により、卵子のGV期におけるヒストンアセチル化の異常がMII期の染色体分配の異常に関与していることがGV卵を用いたHDACのRNA干渉法により示唆された。次年度はHDAC抗体を用いた免疫染色法にて卵子内のHDAC発現量についての解析を行う。 さらに、MII期において染色体分配異常がみられる場合はその1ステージ前のMI前期において姉妹染色分体の緩みが生じていると予想される。姉妹染色分体の結合をつかさどるコヒーシンの解析も行う。
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Causes of Carryover |
研究が順調に進み、マウスや消耗品の使用が済むなく済んだ為。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究ではマイクロマニピュレーター装着倒立顕微鏡等はすでに申請者が所属する研究室が所有しているもの、もしくは導入予定のものを使用する。 ・マウス購入・維持費:卵子採取用ICR・C57BL/6・BDF1@1,000~1,500円x300匹+マウス用餌 ・消耗品:卵子培養用消耗品(プラスチック消耗品、試薬など。約2000円/回x50回/年) 解析用消耗品(試薬:5,000円x50~70回/年、抗体:3-50,000円x4~6種類、siRNAプライマー:40,000x3種類、PCR経費:Taqポリメラーゼ15,000x2~3個、プライマー 約10,000円)・旅費:関連学会における成果発表と情報収集を兼ねる。・外国語論文の校閲(謝金)および学会誌投稿料(その他)
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Induction of DNA methylation by artificial piRNA production in male germ cells.2015
Author(s)
Itou D, Shiromoto Y, Shin-Ya Y, Ishii C, Nishimura T, Ogonuki N, Ogura A, Hasuwa H, Fujihara Y, Kuramochi-Miyagawa S, Nakano T.
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Journal Title
Curr Biol
Volume: 25
Pages: 901-906
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Generation of cloned mice from adult neurons by direct nuclear transfer.2015
Author(s)
Mizutani E, Oikawa M, Kassai H, Inoue K, Shiura H, Hirasawa R, Kamimura S, Matoba S, Ogonuki N, Nagatomo H, Abe K, Wakayama T, Aiba A, Ogura A.
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Journal Title
Biol Reprod
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
Peer Reviewed
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[Journal Article] Establishment of paternal genomic imprinting in mouse prospermatogonia analyzed by nuclear transfer.2014
Author(s)
Kamimura S, Hatanaka, Y, Hirasawa,R Matsumoto K, Oikawa, M, Lee J, Matoba S, Mizutani E, Ogonuki N, Inoue K, Kohda T, Ishino F, Ogura A.
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Journal Title
Biol Reprod
Volume: 91
Pages: 1-12
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