2014 Fiscal Year Research-status Report
ヒト悪性腫瘍におけるRACがん遺伝子の発がん機構の解明
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26430106
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河津 正人 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (20401078)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | がん遺伝子 / 低分子量GTP結合蛋白質 |
Outline of Annual Research Achievements |
がんに対する分子標的療法の有効性は、BCR-ABL陽性白血病に対するイマチニブ、HER2陽性乳癌に対するトラスツズマブなどが、これらの疾患の予後を劇的に改善したことにより明らかである。しかし、明確な治療標的が判明しているがんは限られており、様々ながんにおける標的分子、すなわち本質的ながんの原因遺伝子の同定と、その詳細な分子メカニズムの解明が必要とされている。本研究では申請者らが発見した新規がん遺伝子であるRAC蛋白質の活性化型変異について、RAC変異を伴うがんの分子標的療法開発のための基礎的知見を得ることを目的とする。 代表的ながん遺伝子であるRAS(KRAS, HRAS, NRAS)以外の低分子量GTP結合蛋白質の発がんにおける役割は長年明らかにされていなかった。しかし、ここ数年でRACに加えて、他の低分子量GTP結合蛋白質の変異も報告されつつある。例えばRASファミリーのRIT1の活性化型変異が肺腺癌の約2%に見られる。またアクチン繊維の制御にかかわるRHOAの変異がスキルス胃癌と末梢性T細胞リンパ腫で高頻度(10%-70%)に見られる。これまで困難とされていた低分子量GTP結合蛋白質に対する阻害剤の開発が再び注目を浴びておりRACがん遺伝子に関しても、有望な治療標的として今後の研究の発展が不可欠である。 本年度は乳がん臨床検体中の低分子量GTP結合蛋白質の発がんをもたらす変異の検出を進めた。RACファミリー以外に3種類の低分子GTP結合蛋白質において活性化型変異を同定した。ヌードマウスを用いた造腫瘍能の評価を行い、いずれについても発がん能が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
乳がん臨床検体を対象とし、次世代シーケンサーによるエクソームシーケンスを行った。TP53変異、PIK3CA変異など乳がんで良く知られた変異が既報と同様の割合で検出され、解析は妥当に行われていると考えられた。RACの変異は同定されなかったが、これまで報告の無い低分子量GTP結合蛋白質の変異が同定された。いずれの変異も単一症例でのみの検出であったが、その変異部位から活性化型と予測された。ヌードマウスを用いて造腫瘍能を評価したところ顕著な造腫瘍効果が認められた。実際に造腫瘍効果のある変異を複数同定しており、確実に研究成果は得られていると考えられる。 一方で、当初の予定の肉腫、および肺がん検体での解析が滞っており、研究全体としてはやや遅れているとの自己評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
RACの変異は当初の予想通り非常に低頻度であり、一方で他の低分子量GTP結合蛋白質においてもやはり活性化型変異が低頻度で存在することを示唆する結果が得られている。RACの変異に加えて、本年度の解析で検出された低分子GTP結合蛋白質の活性化型変異も対象に含め今後の解析を進めていくことを検討している。
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