2015 Fiscal Year Research-status Report
新規大腸がんモデルマウス作製とがん悪性化進展機構の研究
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26430110
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
中山 瑞穂 金沢大学, がん進展制御研究所, 助教 (20398225)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 大腸がん / 悪性化 / 多段階発がんモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ヒト大腸がんの悪性化進展機構を明らかにするため、ヒト遺伝子異常を反映する『大腸がん悪性化進展モデルマウス』を作製することである。 (モデルマウスの作製状況について)申請時に作製中であったApcΔ716Trp53R270HVillin-CreERT2マウスおよび ApcΔ716Trp53R270HTgfbr2fl/fl Villin-CreERT2マウスに加え、KrasG12D 変異を持つマウスを作製した。これでヒトの大腸がんのドライバー遺伝子変異をほぼすべて持つマウスが完成した(AKPTマウス)。ヒト大腸がん悪性化モデルマウス(AKPT)マウスはApcΔ716マウスに比べて、非常に早い期間で悪性度の高い浸潤がんを発症した。しかしながら、寿命が短いために転移や再発まで1個体の中で追うことは難しかった。そこで、AKPTマウス腫瘍からオルガノイドを樹立した。このオルガノイドは、免疫不全マウス(NOGマウス)において高頻度に転移することがわかった。 また、ApcΔ716Trp53R270H(AP)マウス)に着目した。興味深いことにこのマウスは浸潤がんを発症し、浸潤先の腫瘍細胞でのみTrp53タンパクの核蓄積が見られた。APオルガノイドは、ブランチング構造を持つ特異な形態構造を示しNOGマウスでも腫瘍形成能力が見られ、この表現型はTrp53の核蓄積に依存していた。形成された腫瘍はヒトの悪性化大腸がんと組織的な特徴が非常に類似していた。またオルガノイドを用いたRNA発現解析で、未分化性や自然免疫に関係するシグナルがかなり高く上がっていること、これらが変異型p53によるクロマチンリモデリングによる可能性があることを明らかにした。 これらは、Apcとp53のたった2つの遺伝子変異によるものであり、大腸がんの多段階発がんモデルを理解する上で非常に興味深い知見として現在論文を準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的であった大腸がん悪性化モデルマウスの作製がほぼ完了できた。また、腫瘍から構築したオルガノイドを用いて、NOGマウスに移植することでがんの浸潤や転移などを再現できた。 また、ドライバー遺伝子の一つであるTrp53変異についてもその悪性化への関与を明らかにできた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である今年度は、AKPTオルガノイドの転移および再発能力をさらに深く検証していく。具体的には、AKPTオルガノイドは脾臓から肝臓に転移するが、その際にミクロな転移の前後でどのような細胞の動きがあるかを、肝臓の生細胞イメージングによって細かく観察する。また、オルガノイドのRNAシークエンスを行いAPオルガノイドとの発現比較を通して、これらのオルガノイドの表現型がどのような遺伝子によるものなのか解析する。 また、APマウスにおいて明らかとなったTrp53の核蓄積が何によって制御されているのか明らかにする。具体的には浸潤部に特に多い間質細胞からの刺激、もしくはTrp53変異腫瘍細胞からのサイトカイン刺激が周囲の自然免疫を活性化しそれが核蓄積を促進することを想定し、オルガノイドもしくは樹立した2D細胞を用いて、様々な刺激をおこなって核蓄積のメカニズムを明らかにする。 このメカニズム解明は、がん治療標的にも非常に有用な知見に成りうると期待している。
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Research Products
(2 results)