2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26430117
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
高橋 英嗣 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30206792)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 酸素 / pH / 腫瘍細胞遊走 / 低酸素微小環境 / イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
H27年度は、前年度に新規考案・製作したgap cover glass(GCG)を用いた組織内酸素濃度勾配のin vitroモデルにおいて以下の知見を得た。1. PreSens社製酸素感受性シートを用いGCG直下酸素濃度の蛍光イメージングを行ったところ、コンピュータシミュレーションの結果に合致する酸素濃度勾配が観察された。2. 生理的な酸素濃度下でGCG直下のMDA-MB-231細胞の遊走を12時間にわたって観察したところ、酸素濃度勾配に沿って、酸素濃度の高い方向へ向かう細胞遊走が観察された(方向性遊走)。(ISOTT2015、第54回日本生体医工学会大会等で発表済み、査読付き論文印刷中)3. 酸素濃度勾配を減少させるために細胞密度を低下させた所、2の方向性遊走は消失した。4. negative controlとして酸素濃度を生体内では見られない高値に設定した所、2と同様の方向性細胞遊走が観察された。これは、予想と反する結果である。以上より、細胞遊走の方向が酸素濃度勾配のみで決定されるのではない可能性が考えられた。そこで上記実験モデルにおいて、酸素濃度勾配と同時に形成されるであろう細胞外pH勾配の影響を検討することとした。細胞外pH勾配の蛍光イメージングにはBCECFを用いた。5. GCG直下にpH勾配の形成が確認できた。6. pH勾配は酸素濃度の設定条件により大きく変化しなかった。7. 細胞密度を変えることでpH勾配が変化したが、pH勾配の変化が見られたGCG直下微小領域と3で述べた細胞密度低下により方向性遊走が消失した領域にオーバーラップが見られた。(第55回日本生体医工学会大会発表予定、ISOTT2016発表予定)以上の結果は、今回の腫瘍組織微小環境モデルにおいては、細胞外pH勾配がMDA-MB-231細胞の方向性遊走を誘導した可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおり、in vitro実験モデルを確立し、それを用いMDA-MB-231細胞の方向性遊走を示すことができた。腫瘍細胞の方向性遊走の可能性は古くから予想されてきたが、それをin vitro系で初めて示し得たものと思う。この成果の一部は査読付き論文として印刷中である。以上より、研究は順調に進展してきた。一方で、既知の細胞内酸素センシングメカニズムからは予測できなかった方向性遊走が見つかり、酸素以外の細胞遊走誘導メカニズムを考察する必要が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点では、細胞外pH勾配を想定することで、これまでの実験結果を説明可能であることが判明している。これまでに方向性遊走を現象として捉えることに成功していることから、今後はその細胞内メカニズムの検討に発展することになる。具体的には、まず、当初予想しなかった細胞外pH勾配による細胞遊走誘導についてエビデンスを積み重ねる。培養液の調製法を工夫することで細胞外pH勾配を大きく変化させ、それに伴う細胞遊走の変化を観察する。次に、細胞遊走と細胞外pHを関係付けるファクターである焦点接着斑(FA)に注目して、方向性遊走に特異的なpH条件を探索する。一方で、これまでの実験結果から、細胞遊走の方向性を論じる際、細胞同士の衝突がアーチファクトとなる可能性が明らかとなった。今後、細胞同士の衝突を避けた上で遊走の方向を決定する手法を開発する。
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Causes of Carryover |
少額のため残高処理を行わなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
消耗品費
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Research Products
(16 results)