2014 Fiscal Year Research-status Report
大腸がんの発生・悪性化におけるAhレセプターの役割
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26430131
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Research Institution | Research Institute for Clinical Oncology, Saitama Cancer Center |
Principal Investigator |
生田 統悟 埼玉県立がんセンター(臨床腫瘍研究所), その他部局等, 研究員 (00262072)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | Ah receptor / colon cancer / inflammation |
Outline of Annual Research Achievements |
飼料中の植物性分量の違いによるMinマウスの腫瘍形成の変化 本年度は食餌成分によるがん予防効果を検討するため、indole-3-carbinol (I3C)処理による遺伝子発現の変化を解析した。正常C57BLマウスに0.1% I3Cを含む飼料を2週間与えたのち、小腸からRNAを抽出して自然免疫に関連する約180の遺伝子を調べた。I3C処理マウス(n=2)では、未処理(n=2)と比べて、サイトカインや免疫制御に関わる遺伝子に発現抑制がみられた。中でもケモカインであるCCL5は未処理の3割程度に抑えられた。一方STAT3の活性化を収束させることが知られるSOCS3の発現は増加した。RT-PCRで再検討すると、野生型マウス(n=4)では、I3C投与群のうち2匹にCCL5の発現が低下した一方、AhRKOマウス(n=4)では、低下しなかった。SOCS3の発現は、マウスの遺伝子型に関わらず、I3C投与による増加の傾向が見られた。腸におけるI3Cの免疫抑制的な効果が示唆され、腫瘍抑制効果との関連が考えられた。
AhR発現細胞の同定と組織内分布 ヒト大腸がん組織の免疫染色によりAhR発現分布を検討した。非腫瘍組織のAhR発現は上皮細胞では低く、間質の細胞に発現を認めた。特に腸の内腔に近い粘膜上皮の先端部に特徴的に分布した。このAhR陽性細胞は、マクロファージのマーカーであるCD68陽性細胞と類似の分布を示した。腫瘍組織のAhR染色性は、間質と腫瘍細胞に認められ、およそ50例調べたうち1/3 の割合で腫瘍細胞の核に局在した。細胞増殖との関連を調べるため、ヒト大腸がん細胞株の培地にAhR のantagonist であるCH223191を添加したところ、細胞数の低下がみられた。これらより、大腸がん細胞でAhRの発現および活性化がみられること、また細胞増殖との関連が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
動物飼育施設の建設が遅れているため
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Strategy for Future Research Activity |
AhRの腸管免疫に与える影響について: AhRリガンドによる免疫細胞分化のコントロールについて検討する。マウス個体また培養細胞等を用い、リガンド処理された細胞の分化マーカーの発現等を指標に解析する。またリガンド摂取による免疫関連遺伝子の発現変化とそのメカニズムについて、正常およびAhRKOマウスを用いて検討する。
大腸ガンにおけるAhR発現と機能について: 1)ApcMin/+マウスならびにヒト大腸に生じた腫瘍では、AhR発現の亢進がみられた。複数の大腸がん細胞株を使ってAhR発現を変化させた場合の増殖等に及ぼす効果、またはAhRリガンドの効果等を調べることにより、AhRの役割を調べる。2)ApcMin/+マウスと組織特異的なAhRKOマウスを掛け合わせることにより、AhRの腫瘍形成における役割を検討する。3)腫瘍組織の初代培養系を確立し、AhRリガンド処理効果や、AhR発現を変化させた時の細胞増殖などを検討する。
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