2014 Fiscal Year Research-status Report
神経内分泌腫瘍の新規がん抑制遺伝子PHLDA3の機能解析
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26430133
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
大木 理恵子 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, 主任研究員 (70356252)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 神経内分泌腫瘍 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、神経内分泌腫瘍(NET)発症のメカニズム解明と、NET治療・診断に役立つ成果を得る事である。我々は、機能未知であったPHLDA3遺伝子が、新規のAkt抑制因子である事を見いだし、肺と膵臓のNETにおいて、がん抑制遺伝子として機能している事を明らかにした(Cell, Vol. 136, pp. 535-550, 2009)。我々は、PHLDA3が様々な組織に由来するNETのがん抑制遺伝子であると考えており、PHLDA3によるAkt抑制がNET抑制において中心的な役割を持つと考えている。そのため、PHLDA3遺伝子のLOHが認められた患者にはAkt経路の阻害剤が著効する可能性があると考えている。さらに、PHLDA3遺伝子のLOHはNET患者の予後と強い相関があり、PHLDA3遺伝子のLOH診断により、患者予後の予測ができるようになる可能性がある。本研究を進める事により、NET患者の個別化医療に貢献出来ると考える。 これまでの我々の研究から、肺のNETではPHLDA3遺伝子が高頻度に欠損していることが明らかになっている。また、膵NETは発症率が膵臓がん全体の約2%前後という珍しいがんであるが、当研究所で集めた55個のサンプル全てに対してLOH解析を行ったところ、63%にLOHが認められ、非常に高頻度にPHLDA3遺伝子の異常が起きている事が明らかとなった。また膵NETでは、LOHに加えて、PHLDA3遺伝子プロモーターのメチル化が起きており、PHLDA3遺伝子がLOHとメチル化という2 hitにより機能が損なわれている事が示された。以上の事から、PHLDA3が膵NETの重要ながん抑制遺伝子として機能する事が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画している研究は順調に進行している。 現在、PHLDA3欠損マウスを用い、膵臓などの神経内分泌組織に腫瘍が発生するか、詳細に解析を進めている。一方、膵NETの予後と関連性が高い遺伝子はこれまでの所報告されていないが、我々はPHLDA3遺伝子にLOHが認められる患者の予後はLOHがない患者に比べて悪い事を明らかにした。この事から、PHLDA3遺伝子のLOHが認められた患者にAkt経路の阻害剤を投与することで予後改善の可能性があると考えている。本仮説が立証されることによって、Akt経路阻害剤が奏効する患者を前向きに診断することが可能となり、NET患者の個別化医療に貢献する事が出来る。今後、PHLDA3遺伝子のLOH診断により、患者予後の前向き診断が可能か検討したいと考えている。さらには、膵臓と肺以外のヒトNETにおいて、PHLDA3遺伝子の異常が認められるか検討する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、以下の3点について、さらに研究を進める。
1.PHLDA3欠損マウスを用い、膵ランゲルハンス島、下垂体以外の内分泌組織に異常が認められるか解析する。さらにはNETの発症が認められるか詳細に検討を行う。 2.我々はこれまでにヒト下垂体腫瘍の症例を50症例収集している。今後、これらの症例でPHLDA3遺伝子の異常が認められるか、解析を行う。 3.膵NETのPHLDA3遺伝子にLOHがある症例とない症例においてAkt経路阻害剤であるEverolimusの効果の有無について前向きの研究を行う。
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Causes of Carryover |
実験の都合上、次年度に使用するほうが成果を上げやすいと考えれれたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費として使用予定。
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