2014 Fiscal Year Research-status Report
癌における低分子代謝異常の解明とこれを利用した光線力学診断法の確立
Project/Area Number |
26430141
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
小倉 俊一郎 東京工業大学, 生命理工学研究科, 准教授 (90343160)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 光線力学診断 / アミノレブリン酸 / ポルフィリン / 鉄代謝 / 薬剤排出トランスポーター / 低酸素 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌患者にアミノレブリン酸(ALA)を投与することにより腫瘍特異的にポルフィリンが蓄積することが知られており、これを利用した癌の診断が広く用いられている。これまでの研究により、この腫瘍特異的なポルフィリン蓄積にはポルフィリン生合成経路における低分子代謝異常が起きていることが指摘されているが、その詳細は明らかとされていない。そこで本研究では癌におけるこれらの代謝異常の全容を明らかとすることを目的とした。 本年度は代謝異常に関する分子の中で中心的と思われる関連トランスポーターの同定を行った。その結果、従来関連が認められていたPEPT1やABCG2の他にABCB6が新たにポルフィリン前駆体排出トランスポーターとして機能していることが明らかとなった。このトランスポーターは実際に診断で用いるポルフィリンの前駆体の状態のポルフィリンを細胞外に排出するため、極めて重要な役割を果たしていると言える。さらに、このトランスポーターは低酸素状態において発現が亢進することが分かった。従来から低酸素状態において腫瘍でのポルフィリン蓄積量が減少する事実が報告されていた。本研究の結果から、この現象の理由が明らかとなり、低酸素におけるABCB6の発現がポルフィリン蓄積に大きな影響を与えていることが分かった。 さらに鉄イオン代謝の影響も詳しく調べた。その結果、ポルフィリンに挿入される鉄イオン濃度がポルフィリン蓄積に大きな影響を与えていることが分かった。具体的には癌細胞では鉄イオン濃度が低く、正常細胞では鉄イオン濃度が高いために、癌細胞は正常細胞と比較して多くのポルフィリンを蓄積することが明らかとなった。 このように本年度は低分子代謝異常の重要な鍵となる二つの因子を発見・同定することに成功した。来年度以降はこれらの因子をコントロールすることによって、診断効果を向上し得る方法論の開発に着手する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はアミノレブリン酸投与後の低分子代謝異常の解明を行い、光線力学診断法の確立を目指すものである。本年度の目標は「低分子代謝異常の解明」としていたが中心的な役割を果たすトランスポーター・鉄イオン代謝異常を発見することができ、診断効果を向上させる方法論の方向性を示すことに成功したと言える。以上のことから当初の計画に対しておおむね順調に進展していると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
アミノレブリン酸投与後の低分子代謝異常について二つの大きな知見がこれまでの研究で得られたと言える。今後は得られた知見に立脚した診断効果を向上させる方法論を開発してゆく。具体的には次の二点である。(1)ターゲットとなるトランスポーターが同定できたため、トランスポーター阻害剤を開発してゆく。トランスポーターを阻害することによって細胞内ポルフィリン蓄積量が飛躍的に増大してゆくであろう。(2)鉄イオン濃度をコントロールする手法を検討する。癌細胞と正常細胞において鉄イオン濃度が異なっていたため、鉄イオンの取り込み能が癌と正常で異なると考えられる。そこで鉄イオンを追加投与することによって、ポルフィリン蓄積量を向上させることができると考えられる。 上記二点の検討を軸に多方面の検討を行い、低分子の代謝異常を用いた光線力学診断法の確立を目指してゆく。
|
-
[Journal Article] 5-aminolevulinic acid enhances cell death under thermal stress in certain cancer cell lines2015
Author(s)
Taku Chibazakura, Yui Toriyabe, Hiroshi Fujii, Kiwamu Takahashi, Mariko Kawakami, Haruna Kuwamura, Hazuki Haga, Shun-ichiro Ogura, Fuminori Abe, Motowo Nakajima, Hirofumi Yoshikawa and Tohru Tanaka
-
Journal Title
Bioscience Biotechnology and Biochemistry
Volume: 79
Pages: 422-431
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-