2015 Fiscal Year Research-status Report
がん幹細胞の根絶を目指した新規ウイルス療法の基礎開発
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26430156
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩井 美和子 東京大学, 医科学研究所, 技術専門職員 (50396884)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ウイルス療法 / がん幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳腫瘍の中でも膠芽腫は予後不良の難治性腫瘍であり、現状では再発は必至である。その要因の一つとして脳腫瘍幹細胞の存在が考えられている。申請者の所属する研究室ではがん細胞におけるウイルス複製能に優れ、かつ安全性が高い第三世代がん治療用単純ヘルペスウイルスI型のG47Δを開発し、再発膠芽腫を対象とした臨床試験が展開されている。更にG47Δは膠芽腫由来のがん幹細胞にも効率良く感染し破壊することを見出している。そこで、がん幹細胞をも標的とする、脳腫瘍の根絶的な治療に結びつく新規がん治療用HSV-1を開発し、その有効性を評価することを目的として本研究を進めている。 昨年度に引き続き、新たに膠芽腫の臨床検体から樹立した複数のがん幹細胞におけるG47Δの効果をin vitroにて検証し、多くの細胞株において高い殺細胞効果を確認できた。更に、がん幹細胞性を失わせる分子として、TGF-βスーパーファミリーに属する骨形成因子(bone morphogenetic protein)の一つであるBMP4分子に着目し、BMP4発現型G47Δ を、T-BACシステム(所属研究室で開発された任意の遺伝子カセットを確実に挿入し、短期間で作製可能なG47Δを基本骨格とするbacterial artificial chromosome (BAC) システム)を利用して作製した。対照ウイルスとしては目的遺伝子のない空のカセットを同様のシステムで導入したT-01を用いた。がん幹細胞で形成したマウス腫瘍モデルにて、BMP4発現型G47Δの腫瘍形成能やマウス生存に及ぼす効果をT-01の効果と比較検討したところ、In vitroの系でT-01に比べBMP4発現型G47Δが高い殺細胞効果を示した細胞株においては、mock群およびT-01投与群に比べ有意に生存期間の延長を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
所属研究室では、膠芽腫の臨床検体からがん幹細胞を分離培養することに成功しており、現在も樹立を続けていることから、昨年同様、複数の脳腫瘍幹細胞に対するG47Δの効果を検討することができた。 また、所属研究室ではマウス脳腫瘍モデルの系が既に確立しており、予備実験の時間が短縮できた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、in vitroおよびin vivoにおけるBMP4発現型G47Δのウイルスの殺細胞効果等およびがん幹細胞で形成したマウス脳腫瘍モデルでのマウス生存に及ぼす効果を検証できたので、平成28年度は、脳腫瘍幹細胞のパネルを用いたBMP発現ウイルスによる治療効果の増強や、幹細胞性に関連する因子のmRNAおよびタンパクレベルでの増減の比較検討結果から、その関連性を見出す。また、複数の脳腫瘍幹細胞におけるG47ΔおよびBMP4発現型G47Δの効果を比較することで総合的にG47Δの有効性を評価する。
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