2015 Fiscal Year Research-status Report
CD4+T細胞を介した抗腫瘍免疫応答に対する可溶性IL-6受容体の影響の解明
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26430165
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
粟井 博丈 (塚本博丈) 熊本大学, その他の研究科, 助教 (10433020)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 癌免疫療法 / CD4陽性T細胞 / IL-6 / 可溶性IL-6受容体 / Th1分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者はこれまで、マウスに癌細胞を移植し作成した担癌マウスを用いて、腫瘍特異的CD4T細胞の機能が抑制されるメカニズムについて検討してきた。そして、腫瘍特異的CD4T細胞が抗腫瘍効果を発揮するために必須のステップであるIFN-gamma産生性Th1細胞への機能的分化が、炎症性サイトカインであるIL-6により阻害されることを見出してきた。さらに、担癌個体におけるIL-6を介した免疫抑制機構、特に腫瘍特異的T細胞のTh1分化抑制の作用機序について検討し、癌免疫療法の効果を増強するアプローチの開発を目指し研究を行ってきた。特に、本研究課題ではIL-6シグナルを安定化させる可溶性IL-6受容体(sIL-6R)が、IL-6同様、担癌個体で増加することに着目し、sIL-6Rが腫瘍特異的CD4T細胞の機能(Th1分化)に与える影響について検討することを主な目的とした。 昨年度までに、担癌マウスにおいて、sIL-6Rが腫瘍特異的T細胞のTh1分化抑制に寄与することを、IL-6R遺伝子欠損マウスを用いて明らかにしてきたが、さらに実際の癌患者の末梢血単核細胞、特に単球等ミエロイド系細胞が産生するsIL-6Rが、ヒトCD4T細胞のTh1分化を抑制するという新たな知見を得た。このことは実際に癌患者において、IL-6/sIL-6Rの活性を抑制することにより、抗腫瘍免疫応答を増強できるという可能性を示唆するものである。今後は、癌患者の検体数を増やし、昨年度までに得たデータの再現性を確認するとともに、マウスより得られた結果を含めて、実際に癌患者における癌免疫療法の効果を増強する標的として、IL-6およびsIL-6Rが有力な候補となりえることを実証する。さらに、これらの研究成果を学術論文として発表し、広く一般に公表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年までに樹立したミエロイド系細胞特異的IL-6R欠損マウスを用いて、担癌個体におけるsIL-6RのCD4T細胞の機能に対する影響を検討することができ、その検討の結果、ミエロイド系細胞由来sIL-6RがTh1細胞の分化を抑制することを実証することができた。さらに、IL-6刺激により誘導される転写因子であるc-MafのTh1分化抑制における役割を検討する計画においても、c-Maf変異マウスの検討がほほぼ完了しており、c-MafがIL-6シグナルを介した免疫抑制に関与するという新たな知見を得ることができた。今後は、マウスを用いた検討で得られた知見がヒト検体においても当てはまる現象か否か、を検討することが課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの解析では、希少癌である口腔癌患者より癌患者検体として実験サンプルを確保し、sIL-6RによるTh1分化に対する影響について、予備的な検討を行ってきた。この予備的な検討により、sIL-6RのCD4T細胞に対する効果を検討できる実験系をヒト検体においても確立することができた。そのため、今後は、サンプル数を増やし、更なる検討を行う予定である。また、口腔癌患者だけでなく、他の癌種においても同様の検討を行い、どのような癌種において、IL-6/sIL-6Rによる免疫抑制効果が顕著であり、IL-6シグナルの抑制が、癌免疫療法の効果増強に有効であるか、を検討する予定である。
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Causes of Carryover |
癌患者検体におけるsIL-6RのTh1細胞分化に対する影響を解析するに当たり、実際の研究の対象となる癌患者数が少なく、研究計画当初予測した患者検体数に達しなかった。そのため、解析検体が少なく当初計画した解析を行うに至らず、当該助成金予算を次年度に繰り越すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度以降、癌患者検体を用いた検討の研究対象の幅を広げることにより、癌患者検体数を増やし、昨年度癌患者の検体解析のため計上した繰り越し予算分を、今年度の増加した検体の解析に充てる計画である。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] An oncofetal antigen, IMP-3-derived long peptides induce immune responses of both helper T cells and CTLs.2016
Author(s)
Hirayama M., Tomita Y., Yuno A., Tsukamoto H., Senju S., Imamura Y., Sayem M., Irie A., Yoshitake Y., Fukuma D., Shinohara M., Hamada A., Jono H., Yuba E., Kono K., Yoshida K., Tsunoda T., Nakayama H., and Nishimura Y.
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Journal Title
Oncoimmunology
Volume: in press
Pages: in press
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Identification of Glypican-3-derived long peptides activating both CD8+ and CD4+ T-cells; prolonged overall survival in cancer patients with Th cell response.2016
Author(s)
2.Sayem M., Tomita Y., Yuno A., Hirayama M., Irie A., Tsukamoto H., Senju S., Yuba E., Yoshikawa T., Kono K., Nakatsura T., and Nishimura Y.
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Journal Title
Oncoimmunology
Volume: 5
Pages: e1062209
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] CXCL10 and CCL2 mRNA expression in monocytes is inversely correlated with the HLA-DR lower fraction of monocytes in patients with renal cell carcinoma.2015
Author(s)
4.Motoshima T., Komohara Y., Horlad H., Tsukamoto H., Fujita M., Saito Y., Tanoue K., Kasejima Y., Sugiyama Y., Kawano Y., Nishimura Y., Takeya M., Eto M.
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Journal Title
Oncol Lett
Volume: 2
Pages: 4132
DOI
Peer Reviewed
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