2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26440008
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
平井 秀一 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (80228759)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 神経 / 再生 / 変性 / シグナル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経軸索の再生過程では、まず細胞体側の損傷面における細胞骨格の再構成による成長円錐の形成とこれに続く軸索の伸長が見られる。DLKはこの過程において必要となるタンパク質リン酸化酵素の一つで、MAPキナーゼ関連酵素JNKの活性化を誘導するMAP3Kとして以前我々が同定したものである。JNKも軸索の形成、再生に必要であることを、我々を含む複数の研究グループが既に報告しているが、その分子機構については未だほとんどわかっていない。これまでの本研究において、我々は大脳皮質培養細胞の軸索損傷直後、成長円錐に先立って形成される球状の構造=retraction bulbにDLKを含む顆粒に加え、微小管制御因子SCG10を含む顆粒が蓄積することを見出した。これらは軸索中を末端方向に輸送されていた小胞群が行き場を失ってretraction bulbに蓄積したものと考えられ、何れも正常な軸索中にも存在する構造体ながら、このような存在密度の上昇は局所におけるシグナル伝達網に大きな影響を及ぼすものと考えられる。成長円錐の形成において主要な役割を担っているシグナル伝達の一つが微小管制御に係るもので、前出のSCG10はその要となるものと考えられる。SCG10は微小管の崩壊を誘発する因子として同定されていることから、成長円錐形成時における微小管の再構成を促すものと考えられるが、われわれはこのタンパク質が長期にわたり高い発現量を保つことは軸索伸長の抑制につながるとの知見を得ている。このSCG10はJNKの基質となり、リン酸化されることにより分解が促進されるが、JNKの活性化を誘導するDLKを含む顆粒とSCG10を含む顆粒がともにretraction bulbに濃縮することは、この場所においてSCG10活性の時間的、空間的な制御が行われ、これが成長円錐の形成に寄与している可能性を示すものと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
軸索の再生は損傷を受けた膜の修復、成長円錐の形成、軸索の伸長といった複数の段階を得て進行するが、これらがいかに統合的に進められるかについてはわかっていなかった。これまでの本研究において、膜の修復を支える小胞の濃縮、成長円錐の形成を支える微小管の再構成、さらにこれを軸索の伸長につなげるシグナル伝達の切り替えといった現象全てに係る可能性のある現象を見出すことが出来た他、どの段階でJNK活性が必要となるかの検証も進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
軸索の損傷部位局所における小胞の濃縮、成長円錐の形成、軸索伸長の各段階におけるDLK-JNKシグナル系の役割についてこれまでに得たpreliminaryな結果をもとに、大脳皮質神経細胞培養系を用いて解析を進めると共に、損傷部位のdistal側でおこる事象との比較を進める。さらに、DLKは軸索再生を促進するプレコンディショニングの効果を支える因子としても報告されていることに鑑み、プレコンディショニングの効果が持続するとされる数日間といった長い時間帯において変化する転写調節制御のようなシグナル系の役割についても解析する。一方、神経培養細胞を用いた実験系での解析には限界があるため、より脳内に近い環境を再現すべくグリアとの共培養を用いた実験系の確立を進めたい。
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Causes of Carryover |
27年度中に必要な物品は購入済み。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度中に購入する物品費の一部として使用予定。
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Research Products
(3 results)