2014 Fiscal Year Research-status Report
出芽酵母におけるリボソームRNAの新規転写制御機構の解明
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26440009
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
笠原 浩司 東京農業大学, 応用生物科学部, 准教授 (40304159)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | リボソームRNA遺伝子 / リボソームタンパク質遺伝子 / 転写 / 染色体構造 / エピジェネシス / HMGBタンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主にΔhmo1Δfpr1二重破壊株の生育異常を回復させるサプレッサー変異株の単離と、その原因遺伝子の同定を中心に研究を行った。申請時に既に単離されていた最初の変異株については、生育回復の原因として三番染色体右腕の末端約25 kbの領域を欠失し、この切断点が一部重複した十五番染色体左腕に融合していることを明らかにした。現在、生育回復の原因遺伝子の特定を行っている。本株ではΔhmo1Δfpr1株で著しく低下していたrRNA遺伝子の転写量がΔhmo1単独破壊株並みに回復していたが、35S rRNA遺伝子プロモーター上へのPol I転写開始複合体の形成は回復しておらず、この株のrRNAの転写量の回復はPol Iの転写開始後の伸長あるいはそれ以降の段階に原因がある可能性が示唆された。一方、上記に加え、新たなサプレッサー変異株も多数単離した。その中から生育回復の度合いが異なるいくつかを選んで全ゲノム配列の解読を行い、元の二重破壊株のゲノムと比較した。その結果、各株において元の二重破壊株には存在しなかった変異を特異的に見出した。現在、これらの変異が二重破壊株の生育回復の原因であるかを順次確認中である。 上記研究と平行して行った、Hmo1のin vivoでの標的遺伝子への結合についての研究で、Hmo1のrDNA、及びリボソームタンパク質遺伝子への結合がΔfpr1株で低下することを見出し、Fpr1がHmo1のDNA結合を促進する可能性を見出した。一方、Fpr1自身のDNA結合を検出することは出来なかった。Fpr1はタンパク質の構造変化に関わるとされるPPIase活性を持つことから、Fpr1がHmo1の構造を変化させることにより、そのDNA結合を促進する可能性が示唆された。現在、この可能性について検証を行っている。また本研究を行う中で明らかになったHmo1のDNA結合に関与する各ドメインの役割について論文報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時の目標としてあげていた(申請時までに取得していた)サプレッサー変異株の変異点の特定に成功し、Δhmo1Δfpr1二重破壊株の生育回復の原因が三番染色体の広範な領域の欠失、及び十五番染色体末端への転座という興味深い染色体構造の変化にあることを明らかにした。さらに新たに複数のサプレッサー変異株を単離することができた。これらのサプレッサー変異株の中には、Δhmo1Δfpr1二重破壊株の生育の回復の度合いが様々に異なるものが含まれており、目的通りHmo1、Fpr1の細胞内における機能を推定する上で、有用な手がかりが得られるものと期待でき、研究計画上の目標をおおむね達成出来たと考えている。 またHmo1とFpr1の機能的関連についても、Fpr1はDNAに直接結合するのではなく、Hmo1に働きかけ、その活性を制御するという可能性(おそらくはHmo1の二量体化の促進)が見出された。Fpr1を始めとするPPIaseは、タンパク質の構造変化に関わると考えられているものの、実際にはその標的分子は全くといってよいほどわかっておらず、我々の知見は、PPIaseの具体的な働きを分子レベルで明らかにする初めて例となる可能性がある。 一方で、初年度の計画の内、ヒストン修飾酵素やヒストン遺伝子自身に変異を導入しての解析には手を付けることが出来なかった。しかし、これは上記のような他項目の進歩に加え、そこから派生した研究についての論文報告に優先的に時間を割いた結果であり、予期せぬ問題が生じたためではなく、今後計画通り研究を行う予定である。 以上のような進捗状況を鑑み、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の今後の推進方策としては、これまでのΔhmo1Δfpr1二重破壊株の解析から得られた知見をさらに発展させる形で、研究を継続していく。 具体的には、まずΔhmo1Δfpr1二重破壊株の生育回復の原因として同定した三番染色体の欠失、及び十五番染色体末端への融合について、この染色体構造の変化に伴う何が生育回復の原因となっているのかを、人工的にこの変化を細分化し、再現することにより、原因となっている領域を限局・特定する。三番染色体末端の切断や十五番染色体末端の重複は、大阪大学のグループとの共同研究により行う。 昨年度単離したΔhmo1Δfpr1株からの他のサプレッサー変異株については、引き続き全ゲノム解析による変異遺伝子の同定を目指すと共に、うまく行かない株については、変異が全て優性であることから、これらサプレッサー変異株からゲノムライブラリーを作成し、通常のライブラリースクリーニングによって原因遺伝子の同定を目指す。 Δhmo1Δfpr1株に対し、様々なヒストンの変異、各種クロマチン構造変換因子やヒストン修飾因子の変異を導入し、Δhmo1Δfpr1株の生育を回復させるものを探索する。これによってΔhmo1Δfpr1株の生育、あるいはrRNA転写の異常と染色体構造の関連の有無やその分子基盤についての手がかりを得て、Hmo1、Fpr1の転写、及び染色体構造における役割の解明を目指す。
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Causes of Carryover |
当該年度(昨年度)投稿し、受理された論文の掲載費用として必要な額を計上し、年度末まで確保していたが、科研費が使用出来る期限内に出版社から請求がなされなかったため、急遽別の物品の購入に使用することも検討したが、無理に全額使い切るのは効率的な研究費の使用に反すると考え、最終的に残額を次年度へ繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越した額は今年3月に出版された論文の掲載費、あるいは今年度必要な物品の購入に充てる予定である。
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Research Products
(2 results)