2015 Fiscal Year Research-status Report
心筋細胞の増殖分化におけるSUMO化依存的なクロマチン構造変換機構の解析
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26440015
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
小川 英知 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所・バイオICT研究室, 主任研究員 (20370132)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 転写因子 / クロマチン構造変換 / 心筋分化 / 細胞周期 |
Outline of Annual Research Achievements |
組織の発生分化や細胞の恒常性維持、その破綻によっておきる癌化といった現象の解明には細胞の分化と増殖を制御する機構の理解が重要である。細胞の分化と増殖は転写制御を介した遺伝子発現の調節によってそれぞれ制御されているが、これら両者を総合的に制御する機構については未だ不明である。この制御機構に必須な転写制御領域のクロマチン構造変換機構の解析は、分化と増殖のエピジェネティック制御を理解する上でも重要な課題の一つとなっている。これまでに我々はSUMO化依存的クロマチン構造変換因子ARIP4を精製および同定し、プロモーター上で細胞周期制御複合体E2F6複合体と相互作用することを見出した。本研究ではE2F6-ARIP4複合体形成の細胞分化過程での役割を明らかにし、生理的意義を解明することを目的とした。 本年度は特にE2F6-ARIP4複合体の調節機構を明らかにする上で、(1)細胞外環境に応答してARIP4が選択的オートファジーを介した分解されること、(2)その分解機構がARIP4複合体に含まれるp62/SQSTM1依存的であること、さらに(3) p62のUBA domainとARIP4の内部に含まれる90アミノ酸の領域が特異的に強く結合することを明らかにした。これらの結果は、心筋組織ではストレス環境下においてこの複合体がARIP4の分解によって解離するため、標的遺伝子のプロモーター構造が開き遺伝子発現が起きやすい状況が作り出されることを示唆している。 これらを踏まえ、次年度ではこの複合体制御の生理的な意義と心臓組織での具体的な標的の探索、さらにES細胞の心筋分化系を応用してARIP4複合体の細胞内局在とその制御機構について明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度にゲノムワイドの解析を行い、ARIP4の核内での主要な機能を明らかにすることができた。それらの情報を踏まえ、本年度は生化学的にARIP4複合体の解析を本年度行った。その結果、構成因子の同定およびその機能解析のうち主要構成因子であるp62の役割を明らかにすることができ、それらを論文として報告した。この解析から、ARIP4は細胞外の環境ストレスを認識し速やかに分解を受けることが明らかとなって。つまりその分解によって細胞は環境へ適応するための遺伝子発現を可能にするクロマチン構造変換を生じることが示唆された。心筋細胞の初代培養および心筋組織での生化学的な解析は十分なサンプル量を確保するのが困難であったため、今回はES細胞分関係および培養細胞での解析を行ったことから、完全に申請計画通りには遂行はできていないが、実験的な困難を回避し、他の方法に迅速に切り替えることにより効率よく重要な知見を得ることができたと考えている。そのため概ね順調に計画を遂行できていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は主にマウスES細胞分化系におけるARIP4-E2F6複合体の解析を行う予定である。培養細胞、マウス胚心臓組織を用いてARIP4の相互作用因子およびクロマチンでの結合様式を明らかにした上で、細胞の増殖と分化の過程をより詳細に細胞レベルで解析することを目的としてES細胞を用いた解析を行う。ES細胞の心筋分化系は確立された実験系で有り、障害はない。shRNAおよびsiRNAを用いたARIP4等のノックダウンを行う予定であるが、これも他の培養細胞で効率よくノックダウンできるshRNAとsiRNAの選定ができているために、概ね問題無く実験を行うことができると考えている。ES細胞は遺伝子導入効率が一般的に低いために、安定したノックダウンを行える様に遺伝子導入試薬、方法の条件を初めに検討する必要があると考えている。
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Causes of Carryover |
本年度は効率よく実験結果を得られたため細胞培養等に計上した消耗品購入費を抑えることができた。 来年度はES細胞の培養関係に使用する試薬が本年度にくらべ多く必要になるために、本年度の繰越金を消耗品購入費に加え購入する予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ES細胞では、専用の培養液、血清、培養プラスチック製品が必要となる。 本年度繰越金を用いて少量のパッケージ製品を購入し細胞の育成の最適な条件決めを行う。
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Research Products
(9 results)