2015 Fiscal Year Research-status Report
19F-NMR法を用いた細胞内環境下におけるタンパク質の動的構造の解明
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26440018
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小柴 生造 東北大学, 東北メディカル・メガバンク機構, 准教授 (70332301)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 19F-NMR / In-Cell NMR / 動的構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では研究代表者が開発した19F標識技術とIn-Cell NMR法を用いて、生きた細胞内におけるタンパク質の動的構造を解析する技術を確立し、これまで試験管内ので解析されていた高次構造レベルでの作用機構を、本来タンパク質が機能している細胞内の環境下で解明することを目的とする。本研究の平成27年度における成果は以下の通りである。 平成26年度に引き続きトリフルオロアミノ酸標識タンパク質の合成および細胞導入の最適化を進めた。特に標識タンパク質の合成に関しては昨年度開発したトリフルオロメチオニンによる標識技術に加えて、新たにトリフルオロ標識したフェニルアラニンを部位特異的に導入する合成法を理化学研究所の研究者に協力を依頼して試した。その結果タンパク質の特定の位置にトリフルオロ標識したフェニルアラニンを導入することに成功し、さらに19FのNMRシグナルの観測に成功した。シグナルは1本のみ観測され、予定通り選択的に標識されていることが確認できた。この標識タンパク質に対して各種化合物を添加しシグナルの変化を観測した結果、化合物選択的にシグナルが変化することが判明した。この結果はトリフルオロ標識したフェニルアラニンの近傍に化合物が結合していることを示している。以上の成果は、本研究の目的であるところの細胞内におけるタンパク質と基質との相互作用の観測のためには不可欠な技術であり、今後の目標達成に大きく貢献した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では研究代表者が開発した19F標識技術とIn-Cell NMR法を用いて、生きた細胞内におけるタンパク質の動的構造を解析する技術を確立し、これまで試験管内ので解析されていた高次構造レベルでの作用機構を、本来タンパク質が機能している細胞内の環境下で解明することを目的とする。平成27年度は部位特異的19F標識技術を用いてタンパク質と基質との相互作用を19Fを用いて高感度に測定することに成功したが、細胞内への標識タンパク質の導入効率の向上に手間取り、最終的な目標である細胞内での相互作用様式の解析までは至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
まず当初の計画通り、トリフルオロ標識VRK1タンパク質を細胞内に導入する効率を上げてNMR測定を行うことで細胞内におけるタンパク質の多様な相互作用を高次構造レベルで解析する技術を確立する。もし導入効率が十分に上がらない場合には、前段階として他のタンパク質の導入を検討する。また新たな標識アミノ酸の導入を検討し、より少量の導入で観測可能な系を開発する。これにより細胞内におけるタンパク質の動的構造変化を時系列で観測する技術を開発する。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、平成27年度はより高感度な標識技術を開発するために新たな19F標識タンパク質の作成を行うと共に、細胞内に標識したVRK1タンパク質を導入して鎖横暴内における相互作用解析技術の開発を行う予定だった。これまでの研究で新たな19F標識技術を用いて合成した部位特異的標識タンパク質を用いて、より低濃度でも高感度に基質との相互作用を観測することができた。しかしVRK1のような高分子量タンパク質の細胞内への導入の効率はまだ不十分のため、次年度に19F標識タンパク質を用いた相互作用解析を行う必要が生じたため、次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、これまでに開発した19F標識技術を用いて各種VRK1タンパク質を合成し、これを細胞内に効率よく導入して、NMRによる細胞内相互作用解析技術の開発を行うことで、細胞内における動的構造を解析するための技術を確立する。次年度使用額は安定同位体標識試薬や細胞培養試薬類などに充てる予定である。
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Research Products
(1 results)