2015 Fiscal Year Research-status Report
天然変性タンパク質NPM1による新規の細胞増殖制御機構
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26440021
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
奥脇 暢 筑波大学, グローバル教育院, 准教授 (50322699)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 核小体 / リボソーム / 転写 / クロマチン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は核小体タンパク質NPM1による細胞増殖制御機構を解明することである。NPM1は大腸がん、乳がん、前立腺がんなどの固形がんで発現が亢進すること、NPM1の変異が急性骨髄性白血病で見出されていることなどから、NPM1の機能を明らかにすることは重要である。NPM1は核小体に主に局在し、リボソーム合成の制御にかかわるが、核小体と核とをシャトルし核質においても遺伝子発現制御にかかわる可能性が示唆されている。しかし、核小体の中におけるリボソーム合成の制御機構や、核質における機能は不明である。これまでの本研究の解析から、NPM1はRNA結合を介して核小体の構造を維持する機能を持つことが明らかになった。NPM1は60Sサブユニットを構成するrRNAと直接相互作用することによって、60Sサブユニット前駆体の核小体への集積にかかわっていた。実際、NPM1をノックダウンし発現抑制した細胞においては、核小体のサイズ、形状が異常になることが明らかになった。また、NPM1の遺伝子発現への役割を明らかにする目的で、昨年度までにNPM1ノックダウン細胞とコントロール細胞のRNAを抽出し、マイクロアレイ解析を行った。その結果、NPM1は炎症や免疫応答にかかわる遺伝子の発現制御にかかわる可能性が示唆された。NPM1は特定の転写因子と直接相互作用し、そのDNA結合の制御を介して遺伝子の発現制御にかかわることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NPM1の核小体における役割については、RNAとの相互作用が重要であることを明らかにし、その成果については、現在投稿中である。また、NPM1の核質での機能についても、NPM1と相互作用する転写因子を同定し、標的の遺伝子についても明らかになった。これまでの解析から、一部の転写因子とNPM1との協調的な働きは明らかになりつつあるが、トランスクリプトーム解析から得られた結果から、他にもいくつかの転写因子との協調的な働きがあるものと考えられる。この点に関しては、今後の課題である。計画はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
NPM1の核小体における機能に関しては、NPM1のRNA結合が重要であることが分かっているが、RNAの同定には至っていない。今後は、NPM1が相互作用するRNAを同定し、NPM1がどのように核小体の構造と機能を制御するのかを明らかにしたい。また、核質におけるNPM1の機能に関しては、転写因子との協調的な標的遺伝子の発現制御機構の一端が明らかになりつつある。今後は細胞や個体を用いた解析を通して、NPM1の炎症とがんにおける役割を明らかにする。また、NPM1と協調的に働く転写因子は、今回同定したもの以外にも想定される。最終年度は、他の転写因子の可能性に関しても検討を進め、NPM1による遺伝子の発現制御機構の全貌を明らかにしたい。
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Research Products
(8 results)