2014 Fiscal Year Research-status Report
微小管構成タンパク質αチューブリンのアセチル化酵素による基質認識の構造基盤
Project/Area Number |
26440033
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
湯澤 聡 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40515029)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 微小管 / 翻訳後修飾 / X線結晶構造解析 / 基質特異性 |
Outline of Annual Research Achievements |
微小管の機能は,各種微小管結合タンパク質やtubulinの翻訳後修飾により制御されている. 微小管のアセチル化修飾は,安定な微小管で広く観察されることが知られており,細胞の極性形成や細胞内の物質輸送の制御に関与している. 近年,α-tubulinアセチル化酵素αTAT1/Mec-17が,α-tubulinの主要なアセチル化酵素であることが明らかとなった.この酵素は,アセチル基の供与体であるアセチルCoA (AcCoA)からα-tubulinの40番目のリジン残基へとアセチル基を転移する.αTAT1は真核生物に広く保存されα-tubulin のLys40に対し高い特異性を示すが,αTAT1の基質認識機構や制御機構については十分に解明されていない. 我々は,αTAT1がAcCoAと安定な複合体を形成していることを見出した.αTAT1へのCoA/AcCoAコファクター結合の役割について検討するため,αTAT1とCoAおよび AcCoA との複合体を発現・精製・結晶化し,複合体の結晶構造をそれぞれ1.8-2.2および1.25オングストローム分解能で決定した.種間で保存されているαTAT1のArg132とSer160が,AcCoAと同様にCoAにおいても安定な複合体の形成に寄与していることを示した.Arg132やSer160をAla残基に置換した変異体では,CoA/AcCoA 非存在下でαTAT1の安定性は著しく低下し,AcCoAへの親和性が低下していることを示した.さらに,R132AやS160A変異体は野生型タンパク質に比べ,ほ乳動物細胞でturnoverが短くなることを示した.以上の結果から,αTAT1は AcCoA やCoAとの相互作用によりin vitroでもin vivoにおいても酵素の安定性が維持されていることを示した.さらに,αTAT1によるα-tubulin 認識の特異性を決定する残基について検討し,基質の選択性に必要な残基がhistoneアセチル化酵素とは全く異なることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該課題で設定した研究項目のうち,当年度はαTAT1がAcCoAやCoAとの相互作用によりin vitroでもin vivoにおいても酵素の安定性が維持されていることを示した.またαTAT1によるα-tubulin認識の特異性について検討し,これらの研究内容を論文として発表した.研究計画に従い当該課題はおおむね順調に進展しているものと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後も当初の研究計画に従い,当該課題を推進する予定である.具体的には,詳細なαTAT1の基質特異性を明らかにするため,αチューブリンの40番目のリジン残基近傍のアミノ酸を含む領域あるいは重合しないα/βチューブリンを基質として用い,αTAT1とアセチルCoAやCoAとの三者複合体についてX線結晶構造解析を行う.また,αTAT1の特異的な基質認識と活性化機構を明らかにするため,構造解析で得られた知見に基づいて変異体を作成し,in vitroでの活性測定とほ乳動物培養細胞を用いて酵素活性や細胞内での機能を検討する予定である.
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Research Products
(2 results)