2016 Fiscal Year Research-status Report
ADAM/ADAMTSプロテアーゼによる基質認識と制御機構の構造生物学的研究
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26440040
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
武田 壮一 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (80332279)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | プロテアーゼ / マルチドメイン / 蛋白質複合体 / X線結晶構造解析 / 基質認識 / 活性制御 / 前駆体 / 構造生物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は各種増殖因子やサイトカインの放出に関わる主要なシェディング酵素であるADAMプロテアーゼと進化的に類縁のADAMTSファミリープロテアーゼに着目し、その基質認識機構と活性調節機構を構造生物学的に明らかにすることを目的とする。①活性調節機構については未だ立体構造が不明なプロドメインと触媒ドメインとの結合構造を明らかにすること、②基質認識機構については基質と酵素が一対一に対応するフォンビルブランド因子 (VWF)とADAMTS13とのエキソサイト認識機構を明らかにすること、に着目して研究を進めている。①について、様々なADAMについてプロドメインと触媒ドメインのみに着目して、大腸菌発現+リフォールディング、昆虫細胞による発現を試みた。大腸菌発現タンパク質はリフォールディング条件の最適化により高収量で可溶性画分に回収され、それらを用いて結晶化スクリーニングを行ったが、残念ながら良好な結果は得られなかった。一方、昆虫細胞Sf9を用いたプロドメインを含む全長分子の発現では、我々が以前に結晶構造を報告した蛇毒ADAMのひとつVAP2について高収量に発現精製することに成功した。現在、精製標品を用いた結晶化スクリーニングを進め、得られた結晶について条件の最適化を進めている。この過程で、プロドメインと触媒ドメインの境界部において混入プロテアーゼで切断を受けること、切断を受けた後もプロドメインは触媒ドメインから乖離せず、強く結合していることが明らかになった。②については、前年度に結晶が得られたADAMTS13のSドメインとVWFの結合領域のペプチドとの融合タンパク質について、6月にSPring8において2.9Å分解能の回折データを得て、構造解析を行った。しかし残念ながら、明瞭な電子密度はADAMTS13のみにしか観察されず、結合しているはずのVWFは観察することが出来なかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ADAMTS13/VWF融合タンパク質について、結晶構造解析を行ったものの、VWF由来の電子密度を観測することが出来ず、基質認識機構について情報を得ることが出来なかった。原因としては、回折データセットを取得した結晶ではVWF結合領域と想定される部位が結晶のパッキングに使われてしまい、VWFが外れてしまったと考えられる。結晶中の分子パッキングが異なると考えられる他の2つの結晶についても回折実験を行ったが、残念ながら解析に十分な分解能の回折データが得られず、ADAMTS13/VWF融合タンパク質についてはコンストラクトの再検討および結晶スクリーニングのやり直しが必要となった。プロドメインによる制御機構の理解については、大腸菌発現+リフォールディングにより、複数種のADAMについてプロドメインと触媒ドメインとを含むコンストラクトを用い、ゲル濾過で単分散を示す可溶性標品を得ることに成功した。これらを用いて結晶化に進んだが、残念ながら結晶は得られなかった。昆虫細胞を用いた発現系の作製は昨年度まではヒトおよびマウス由来の膜型ADAMの細胞外部に着目して進めてきたが、良好な結果が得られなかった。このため、今年度途中より、蛇毒ADAMのVAP2について試みたところ、Sf9で発現出来ることが分かり、条件を最適化し、年度後半にようやく結晶化スクリーニングを開始するに至った。Sf9での大量発現系の構築と並行して、蛇毒から精製した活性化型のVAP2と大腸菌で発現したVAP2のプロドメインとの結合を検討したところ、大腸菌発現のプロドメインは見かけ上区別できない、VAP2に結合する成分としない成分の混在物であることが判明した。この結果を受け、大腸菌発現・リフォールディングタンパク質の品質に疑いを持ち、それらの結晶化を断念した。全体としては、当初計画よりやや遅れていると評価せざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
昆虫細胞を用いた発現系を確立したプロドメインを含むVAP2全長分子の結晶化、X線結晶構造解析を進める。また、試料の精製の過程でプロドメインと触媒ドメイン間の切断が起こり、それでもなおプロドメインは触媒ドメインと結合したままであることが明らかになった。結晶構造解析と並行して、変異体を作成し、それらの解析からプロドメインを乖離し、活性化する機構の解明を進める。ADAMTS13/VWF融合タンパク質について、コンストラクトの設計を変えたものの結晶化、構造解析を進める。
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Causes of Carryover |
当初の計画通りに研究が進まず、昆虫細胞を用いた大量発現系の構築が遅れ、年度の後半から本格的に試料の大量調製を始めたたことで培地、試薬等の消費が少なかったこと、また、結晶調製がうまく進まず、SPring8での放射光実験を一回しか行えなかったこと、などが理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昆虫細胞を用いたVAP2の大量調製を進めており、そのための培地や試薬の購入や、放射光実験および学会出席のための旅費、論文投稿のための英文校正代などに充当する予定である。
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