2015 Fiscal Year Research-status Report
ユビキチン様タンパク質Atg8の新規結合様式とその生物学的意義
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26440052
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岡本 徳子 大阪大学, 生命機能研究科, 特任講師(常勤) (90568750)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / 出芽酵母 / 品質管理 / 膜ダイナミクス / オートファジー / ユビキチン様タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
Atg8はリン脂質PEに共有結合し、隔離膜やオートファゴソームに局在して機能する、オートファジーに必須かつユニークなユビキチン様タンパク質である。これまでの研究により、マイトファジーが誘導される条件下で、Atg8抗体に陽性を示す50-150 kDaの高分子量バンドが複数出現することを偶然見出した。これらのシグナルは、様々な変性条件下でも検出されることから、タンパク質分子間での共有結合が想定される。そこで、His-FLAG-Atg8と共有結合していると思われる候補タンパク質Asu1 (Atg8ylation substrate 1)を、アフィニティー精製(Ni-NTAアガロースとFLAG抗体アガロースを用いたタンデム精製)と質量分析により同定した。さらに、HA-Asu1とHis-FLAG-Atg8を発現した細胞から抽出液を調製し、HA抗体を用いた免疫沈降アッセイを行ったところ、高分子領域にAtg8陽性のバンドを検出することができた。
本年度においては、部位特異的変異導入法を用いてAsu1に様々なアミノ酸置換を導入するとともに、部分的欠失を行い、Atg8ylationに対する影響を解析した。その結果、ユビキチン様タンパク質の一般的な結合部位であるリジンのアルギニン置換変異体では、Asu1のAtg8化はほぼ正常に起こることがわかった。一方、Asu1のC末近傍にはAtg8との相互作用に働くモチーフAIM (Atg8-interacting motif)があり、これを欠失させたり点変異を加えると、Asu1のAtg8化が顕著に抑制されることが明らかとなった。現在、Asu1のリジン以外のAtg8化部位の同定を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Atg8化の基質タンパク質としてAsu1を同定し、Atg8およびAsu1双方からの免疫共沈降アッセイで確認したところ、Atg8陽性かつAsu1陽性の高分子量バンドを検出することができた。これらの結果は、Asu1-Atg8が共有結合により生じたと考えられる。一方、ユビキチン様タンパク質が基質タンパク質に共有結合する際の一般的なアミノ酸残基はリジンであるが、アルギニンへの点変異では、Atg8化は影響を受けないことから、リジン以外のアミノ酸残基への共有結合が想定される。Asu1のAtg8化部位の同定は今後の課題である。なお、C末近傍のAIMに変異を導入してAtg8との相互作用を障害すると、Asu1のAtg8化が顕著に抑制されることから、Atg8化が起こるにはAsu1はAIMを介してAtg8と結合(共有結合ではない)する必要があると考えられる。
Asu1は小胞体に局在する膜タンパク質であり、オートファジーの膜動態を介して液胞(リソソームに相当する分解オルガネラ)に運ばれる。AIMに変異を導入すると、Asu1の液胞移行が損なわれることもわかった。これらの結果は、Atg8化がAsu1の液胞への輸送を促進する可能性を提起している。一方、Asu1の液胞移行にはAtg11が必要であることも明らかとなった。Atg11は選択的オートファジーの足場タンパク質であり、オートファゴソーム形成に必要なAtgタンパク質群の分子集合に機能する。Atg11を欠損すると、Asu1のAtg8化が強く抑制されることから、オートファゴソーム形成の途中もしくは完成後にAsu1がAtg8化されることも想定される。
以上、数多くの新しい知見とともに、研究は順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
①Atg8化を質量分析するための変異体の作成:Asu1-Atg8を質量分析によって解析する際、トリプシン処理によって生じるAtg8のC末領域のペプチドは長すぎる。そこで、C末端から4番目のN113をアルギニン置換したN113R変異体を作成する。これまでに得られているX線結晶構造解析のデータから推測すると、少なくともAtg8のPEへの共有結合はN113R変異によって大きな影響は受けないものと考えている。作成したHis-FLAG-Atg8(N113R)変異体のオートファジー活性、およびAsu1への共有結合活性を確認する。N113R変異体が活性を失う場合は、T114R変異の導入を試みる。
②質量分析によるAsu1のAtg8化部位の同定:Atg8(N113R)がAsu1のどのアミノ酸残基に共有結合しているかを明らかにするため、Atg8化が促進される条件で酵母細胞を大量培養し、Ni-NTAアガロースを用いたHis-FLAG-Atg8(N113R)の精製、それに続きHA抗体アガロースによる免疫沈降によりAsu1-Atg8(N113R)を溶出する。これをトリプシン処理した後、質量分析によりAtg8化部位を同定する。必要なサンプル量が得られない場合は、HA-Asu1およびHis-FLAG-Atg8(N113R)を強力な定常プロモーターで発現させ、さらに精製条件を最適化することにより、収量の増加を目指す。
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Causes of Carryover |
研究打ち合わせのための旅費等、物品の一部は、日本学術振興会特別研究員奨励費により賄われたため、経費を節減できた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
質量分析にかかる費用や研究打ち合わせのための旅費等で使用する予定である。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] Phospholipid methylation controls Atg32-mediated mitophagy and Atg8 recycling2015
Author(s)
Sakakibara K, Eiyama A, Suzuki SW, Sakoh-Nakatogawa M, Okumura N, Tani M, Hashimoto A, Nagumo S, Kondo-Okamoto N, Kondo-Kakuta C, Asai E, Kirisako H, Nakatogawa H, Kuge O, Takao T, Ohsumi Y, Okamoto K
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Journal Title
EMBO Journal
Volume: 34
Pages: 2703-2719
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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