2015 Fiscal Year Research-status Report
カルモデュリンキナーゼカスケードの動作原理と新しいリン酸化制御機構の解明
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26440056
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
徳光 浩 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (20237077)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
曲 正樹 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (50359882)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | CaMKK / リン酸化反応 / AMPキナーゼ / CaMキナーゼI V / 細胞内カルシウム / シグナル伝達 / STO-609 / 特異性 |
Outline of Annual Research Achievements |
私たちはこれまで細胞内におけるCaMKKシグナル伝達経路を解明するためにCaMKK選択的阻害剤STO-609を開発し、用いてきた。CaMKKにはCaMKKαとCaMKKβの2つのアイソフォームが存在するものの、アイソフォームによるシグナル伝達経路の差異については明らかとなっていない。そこで本研究においてはCaMKKαとCaMKKβが異なるシグナル伝達経路を調節するのか、リダンダントな活性化因子であるのかを検証するために、STO-609非感受性CaMKKα/β変異体を作製し、これらの安定的発現細胞株を樹立することにより、CaMKKアイソフォーム特異的なシグナル伝達経路や細胞応答の調節機構の解明を目的とした。ランダム変異導入法によりラットCaMKKαA293Tの変異がSTO-609抵抗性を示すアミノ酸変異であることを同定した。また今回作製したSTO-609抵抗性CaMKK変異体は野生型と比べSTO-609による阻害効率が100-1000倍ほど低いことが明らかとなった。そこで、A549細胞を用いてCaMKIVのThr196のリン酸化を確認したところ、野生型CaMKKα/β発現細胞株ではCaMKIVのThr196のリン酸化がSTO-609依存的に低下したのに対し、STO-609抵抗性CaMKKα/β変異体発現細胞株ではThr196のリン酸化が維持されていた。 このことから、この樹立細胞はSTO-609抵抗性を獲得するとともに、CaMKIVのリン酸化にはCaMKKα/β両酵素が関与することが示唆された。一方、AMPKのThr172のリン酸化はSTO-609抵抗性CaMKKβ変異体発現細胞株のみSTO-609存在下でもリン酸化が維持されていた。このことは現在までの知見と同様に、CaMKK/AMPK経路についてはCaMKKαではなくCaMKKβが担っていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の一部は平成27年度に米国Biochemistry誌に発表済みとなっているため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究によりCaMKKアイソフォームの中でβアイソフォームのみが細胞内においてAMPKをリン酸化依存的に活性化することが明らかとなった。今後は、どのような分子機構にてCaMKKβがAMPKを特異的に認識しリン酸化することができるかについて明らかにすることを目標とする。方法としては、AMPKのリン酸化活性が低いCaMKKαとCaMKKβとのキメラ変異体を作成し、AMPKを基質として酵素活性を測定することにより、CaMKKβの特異的AMPK認識に必要な一次構造領域を決定する。さらにはこの特異的AMPKリン酸化反応に必須のアミノ酸残基を特定する。これらの研究はrecombinant proteinを用いた試験管内反応により行うが、細胞レベルにおいてもCaMKKβの特異的AMPK認識機構を確認することにより、CaMKKβの基質認識の分子機構を明らかにする。
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Research Products
(9 results)