2016 Fiscal Year Research-status Report
鞭毛繊毛に微量しか存在しない新規ダイニンの構造・機能解析
Project/Area Number |
26440074
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
八木 俊樹 県立広島大学, 生命環境学部, 教授 (40292833)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ダイニン / 鞭毛繊毛 / 微小管 / ATP |
Outline of Annual Research Achievements |
鞭毛繊毛運動の基礎はモータータンパク質・ダイニンによる微小管の滑り運動である。ダイニンには 10 種類以上のタイプが存在し、それぞれは固有の機能をもつと考えられている。これらのダイニンの中には、鞭毛内存在量が少ないマイナーなタイプのダイニンも含まれ、それらの多くが鞭毛根元にのみ局在していることが知られている。本研究では、鞭毛繊毛運動におけるこれらのダイニンの機能を探るために、緑藻クラミドモナスの 4 種類のマイナーダイニン(DHC3, DHC4, DHC11, DHC12)の欠失株を単離し、その運動性を調べた。スタンフォード大学の MC. Jonikas 博士らが作成したクラミドモナス遺伝子破壊株ライブラリーの中から、各ダイニンの重鎖(モーター活性をもつポリペプチド)の遺伝子破壊株を探索し、DHC4 を除く 3 つのダイニン重鎖の欠失株を見出した。それぞれの株の運動性を野生株のそれと比較したところ、鞭毛根元に局在する 2 種類のマイナーダイニン、DHC3, DHC11 間に違いが見られた。DHC3 欠失株は野生株よりも運動性がわずかに低下していたが、DHC11 株では野生株とまったく差がなかった。一方、興味深いことに、DHC12 の欠失株の運動性はこれらの変異株と異なる特徴があった。DHC12 は 9 本ある鞭毛内微小管のうち特定の微小管にのみ局在することが示唆されている。その欠失株は、野生株に比べて運動方向を頻繁に変え、遊泳速度は低下していた。ダイニンの欠失により、細胞の遊泳パターンが変わる株が得られたのは初めてである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、鞭毛繊毛内の存在量が少ないマイナータイプのダイニンの構造と機能を調べている。これまでに、緑藻クラミドモナスに存在するマイナーダイニン、全 4 種類のうち、 3 種類について、その欠失株の単離と解析を行った。現在、残り 1 種類についても、欠失株の単離と運動性の解析を行なっている。一方、各ダイニンの構造を調べる実験にはこれまで手を付けられていなかった。それらの構造を調べるために、変異株鞭毛軸糸の電子顕微鏡構造解析を開始している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の目的を達成するために、未同定のマイナーダイニン DHC4 の欠失株を単離し、その運動性からダイニンの機能を解析する。また、各マイナーダイニンの鞭毛軸糸内形態と存在様式を明らかにするために、野生株および各種変異株軸糸の 3 次元構造をクライオ電子顕微鏡トモグラフィー法により比較解析する。
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Causes of Carryover |
当初計画していた、マイナーダイニンの形態と局在の解析がまだ終了していない。 今後は、これまでに作成したクラミドモナスダイニン欠失株の鞭毛軸糸を用いて、クライオ電子顕微鏡トモグラフィー法を用いた構造解析を行い、それを実現させる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
野生株および変異株の鞭毛軸糸を単離し、それらを液体エタンを用いて急速凍結し電子顕微鏡の試料とする。それらの無染色サンプルを液体窒素下に、-60度から+60度方向に5度ずつ傾け、多方向から軸糸の電子顕微鏡像を取得する。それらの画像をコンピュータ上で処理して軸糸の 3 次元像を得る。野生株と変異株の比較により変異株に欠ける構造、すなわち、特定のマイナーダイニンの構造を詳細に解析する。
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Research Products
(7 results)