2015 Fiscal Year Research-status Report
自己組織的構成法による真核生物鞭毛の運動機構の解明
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26440089
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
大岩 和弘 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所, 主管研究員 (10211096)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 鞭毛・繊毛運動 / ダイニン / 自己組織化 / 試験管内再構成実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
【概要】本研究課題は、医学的重要性が高まっている真核生物の繊毛・鞭毛の構造・機能・制御について、これまで研究代表者が進めてきた「構成要素に分解してその特性を調べる要素還元型研究」に加えて、「特性を明らかにした機能要素を順次組み上げていく構成生物学的研究手法による試験管内での鞭毛運動の再現」を行い、要素が自己組織的・協働的に構造と機能を創出する鞭毛システムの解明に迫るもの。 【学術的背景】繊毛・鞭毛の波打ち運動では、周辺微小管側壁から隣接する周辺微小管に向かって突出する2列のダイニン腕が微小管の間に作り出す「ずり」が原動力となっている。このずりが時間的・空間的に制御されて軸糸の屈曲を生じさせ、鞭毛波が作り出されるとされているが、このメカニズムの詳細は明らかになっていない。一方で、鞭毛軸糸は、それを構成するタンパク質が600種類程度と考えられており、構成生物学的研究手法が使える簡潔性と、システムとしての機能の複雑性を有する格好の研究対象である。 【進捗状況】軸糸断片を鋳型として、チューブリン添加で軸糸末端から微小管の重合を開始、シングレット微小管を伸長させた。この軸糸構造再構築モデルにChlamydomonas野生株鞭毛から得た運動活性を持つ外腕ダイニン粗抽出分画を添加することで、外腕ダイニンの24nm構造周期を持つ軸糸断片-微小管複合体を再構築した。混合比の調整によって、ATP添加によって一部の微小管が滑り運動を起こして座屈を起こす現象を確認した。座屈はすぐに解消されて元の状態に戻ると、再び滑り運動が生じて座屈を起こすことを繰り返した。また、偶発的に再構築軸糸の両端が固定されたモデルでは、シグモイド型の座屈が生じた。微小管屈曲の曲率と繰り返し運動の周期の解析から鞭毛波形成高次制御メカニズムの解明にとって重要な手がかりを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
軸糸断片を核とした微小管束構造とダイニン外腕の再構築を行った実験系において、一部に滑りが抑制された場合に特徴的なシグモイド型の屈曲を形成することを確認した。また、一端が固定された場合に、屈曲形成を繰り返して行うことが観察された。以上のように、鞭毛波形成再構成という研究上の目的に着実に近づいていることから、おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
鞭毛屈曲運動の再構築は、より実験収率を上げるために軸糸再構築の手順を改良する。さらに、任意の部位での滑り運動阻害を実現するためにパルスレーザーを用いたタンパク質溶接技術の導入を急ぎ、部分的架橋を行い、最終年度に向けて、波形形成と伝播に関わるメカニズムを明らかにする。
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Causes of Carryover |
研究成果を取りまとめた論文の発表経費を確保していたが、ジャーナルへ投稿後、複数回のrevisionとなったために、年度内の出版ができなかった。このため、次年度に繰り越しを行った。28年度中に出版できる見込みが出てきており、出版費として執行する予定。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在審査中の論文が28年度中には採択される見込みとなっているので、その出版の際に要する掲載料、別刷費用として使用する予定。
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Research Products
(11 results)