2015 Fiscal Year Research-status Report
多重染色超解像顕微鏡による細胞骨格と接着斑のパターン形成機構の解明
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26440091
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木内 泰 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70443984)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 超解像顕微鏡法 / 細胞骨格 / 接着斑 |
Outline of Annual Research Achievements |
アクチン線維や微小管、中間径フィラメント、接着斑といった細胞内構造は、互いに相互作用しながら適切なパターンが形成されると予想される。しかし光学顕微鏡では、光の回折限界によってそれぞれの細胞内構造の空間的な位置関係の解析には限界があった。本研究では、研究代表者が最近開発した高密度・多重染色超解像顕微鏡法IRISを用いて、一見すると細胞内を縦横無尽に走っているように見える細胞骨格構造の空間的な位置関係を解析した。その結果は、アクチンストレスファイバーに絡みつく中間径フィラメントやストレスファイバーや接着斑を乗り上げて伸びている微小管の存在を明らかにした。IRISは、標的に結合するタンパク質のフラグメントの中から標的に素早く結合解離するフラグメントをプローブとして用いる。そこで、細胞骨格や接着斑の成長と崩壊を制御するタンパク質からIRIS用のプローブを作製し、それらの細胞内構造の制御機構を調べた。細胞骨格や接着斑に局在する15種類のタンパク質から作製した46個のフラグメントをスクリーニングした結果、18個のIRIS用のプローブを同定した。これらのプローブを用いてIRIS多重染色超解像を比較した結果、微小管結合タンパク質由来のプローブは、それぞれ微小管の異なる領域を可視化した。また接着斑局在タンパク質由来のプローブもそれぞれ接着斑の異なる領域を可視化した。それぞれのプローブの可視化した領域には、その結合パートナー分子が存在すると考えられる。これらの結果からIRISは、細胞骨格や接着斑を制御するタンパク質複合体の空間分布の多重染色超解像マッピングに応用できることを示している。これらの研究成果は、Nature Methodsに報告している(Kiuchi et al., Nature Methods 12: 743-746, 2015)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
IRISは、蛍光1分子の高精度な位置測定を利用した超解像顕微鏡法(例PALMやSTORM)の原理を応用している。従来の超解像顕微鏡法では、標的に強く結合した蛍光抗体や蛍光タンパク質を用いて標的を標識するが、IRISでは標的に結合解離するプローブを導入している。このため、取得する結合イベント(つまり標識)の回数に依存して標識密度を上限なく高めることができる。アクチン線維上での標識密度は、抗体の最大標識密度の60倍まで到達でき、高精細な超解像画像が得られた。さらにプローブは結合解離しているため、簡単に洗い流してプローブを交換することができ、多重染色超解像を得ることができる。本研究では、標的に局在するタンパク質のフラグメントから結合解離プローブを作製した。細胞骨格や接着斑に局在する15種類のタンパク質から46個のフラグメントを作製し、18個の結合解離プローブを得ることに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
今回得られたIRIS用プローブは、細胞骨格や接着斑を制御するタンパク質複合体の分布をナノメートル精度で多重マッピングに用いることができる。今後、プローブの元となったタンパク質の結合パートナー分子を可視化するプローブをペプチドライブラリーや抗体から作製する予定である。さらにはそのパートナー分子を過剰発現させたり、siRNAによって発現抑制させた場合のIRIS超解像を比較することで、パートナー分子を同定する。この同定されたタンパク質複合体の動態を蛍光単分子ライブセルイメージングで可視化し、さらにはIRIS超解像イメージングで形成される細胞骨格や接着斑を可視化する。これによって細胞骨格や接着斑を制御するタンパク質複合体による細胞内構造のパターン形成機構を解明する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成28年度請求額とあわせ、平成28年度の研究遂行に使用する予定である
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費に184,832円、旅費に400,000円使用する予定である。
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Research Products
(5 results)