2014 Fiscal Year Research-status Report
繊毛の構造的・機能的多様性を生み出す分子メカニズム
Project/Area Number |
26440094
|
Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
成田 啓之 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (50452131)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | TRPV4 / 血液脳脊髄液関門 / 上皮細胞 / 極性輸送 / 繊毛 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は平成26年度に以下の研究成果を得た。1.TRPV4の活性化に伴いCPECsのバリヤー機能が低下し、またTRPV4の基礎活性を阻害に伴いCPECsによる基底側から頂端側への(すなわち血液から脳脊髄液への)α2マクログロブリン(A2M)の極性輸送が減少することを見出した。これらの知見に基づき、CPECsが中枢神経系の炎症の有無をTRPV4によって監視し、炎症が生じた際には抗炎症性タンパク質の輸送を増加させることにより炎症を沈静化させるという、これまで知られていなかった生理機能を持つ可能性を示すことができた。2.研究代表者のこれまでの解析に基づいて繊毛に関連すると予想された新規分子に対する抗体を作成し、その細胞内局在性を様々な組織を用いて検討した。その結果、この新規分子が繊毛基部に局在することを見出した。またこの分子をノックダウンすることにより運動繊毛による細胞外液の流れが低下することを蛍光ビーズの動態解析によって確認することが出来た。更に、この分子をコードするゲノム領域に遺伝子編集技術を用いて変異を導入した遺伝子改変マウスを作出した。3.研究代表者が以前プロテオーム解析を目的として確立したCPECs繊毛の精製方法を改変し、より精製度を高めたCPECs繊毛を得ることが出来た。これにより繊毛の詳細な内部構造を電子線トモグラフィーで解析するための基盤を確立することが出来た。4.本邦において世界で初めて症例報告された繊毛病である有馬症候群の臨床研究を行っている国立精神・神経医療研究センターの伊藤室長との共同研究として、患者から採取された線維芽細胞が持つ繊一次繊毛を透過型電子顕微鏡および免疫染色によって解析した。その結果、患者由来の細胞における繊毛の形成機構および繊毛局在性タンパク質の分布に異常があることを確認できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題に関する研究成果を3報、査読付き学術誌に掲載することが出来た。 繊毛に関与する新規分子の機能解析に関しては、抗体を作成することでその細胞内局在を明らかにするとともに、ゲノム編集技術を用いてノックアウトマウスを作成することも出来た。
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度に得た結果を更に発展させるために、以下の解析を行う。 1.繊毛数調節分子の機能解析:細胞内局在性の解析によって推定された共局在分子との相互作用を免疫沈降法によって解析する。更にこの相互作用に関わる分子内ドメインを決定する。同時に遺伝子改変マウスを戻し交配しつつ、ホモの変異マウスを選抜し、その表現形を解析する。 2.脳室系上皮細胞における嗅覚受容体の受容刺激の検索:繊毛を介したシグナル伝達をモニタリングするためのカルシウムセンサーを細胞に導入し、嗅覚受容体を刺激した際の応答を解析する。 3.繊毛数と繊毛感覚機能の関連解析:上記1で得られた遺伝子改変マウスに加え、これまでの解析で絞り込んだ幾つかの遺伝子をゲノム編集技術を用いてノックアウトしたマウスを作出し、繊毛の機能的変化を解析する。
|
Causes of Carryover |
試薬を当初の計画よりも安く購入することが出来たため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
消耗品の購入に使用する計画である。
|
Remarks |
山梨大学研究者総覧 http://erdb.yamanashi.ac.jp/rdb/A_DispInfo.Scholar/0/20BC270D209BC50C.html
|