2014 Fiscal Year Research-status Report
神経幹細胞の増殖とニューロン分化を協調させる新規分子機構
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26440112
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
勝山 裕 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10359862)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺島 俊雄 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20101892)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 幹細胞 / ニューロン分化 / 大脳皮質発生 / タンパク質発現制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳発生に関わる新規因子Sbno1はアミノ酸配列の類似性からstrawberry notchファミリーに属する核酸作用分子と考えられる(Baba et al., 2006)。脳発生過程でのSbno1タンパク質の発現の詳細が不明であったので、特異的抗体を作製し、免疫組織化学的手法で発生中のマウス大脳皮質での発現を調べた。我々の作製した2つの抗体のうちHM2抗体では胎生12.5日から軟膜直下の細胞で明瞭なSbno1発現を検出した。発生が進むと免疫陽性細胞は増え、皮質板(cortical plate)でSbno1の強い発現が、中間帯(intermediate zone)の細胞でSbno1の弱い発現が検出された。HM2抗体を用いてウェスタン解析を行うと、アミノ酸配列から予想される分子量(140kDa)付近に2つのバンドが検出され、その他に120kDa, 80kDaにメジャーなバンドがみられた。これらのバンドは胎生期(E14.5, E17.5)では強いが、成体の脳ではとても弱かった。HM2抗体はSbno1タンパク質の中央部分のアミノ酸配列を認識する。一方、Santa Cruz社から販売されているH240抗体はSbno1タンパク質のN末側240アミノ酸を抗原として作製されている。この抗体で免疫組織化学を行うと、皮質板の細胞の核で強い免疫陽性反応がみられるが、脳室帯においても明瞭な染色がみされる。そこでマウス胎児脳から神経幹細胞を摘出し、一次培養下でH240抗体を用いてSbno1の発現を観察した。Sbno1は基本的にDAPIで染色されるDNAと共局在するが、分裂中の細胞ではDNAと相反する空間的分布をみせ、免疫陽性シグナル強度は減弱していた。これらの観察からSbno1には2つの抗体でそれぞれに検出される様なタンパク質のアイソフォームなどが存在し、細胞周期などに従って細胞内での局在が変化する様な制御を受けていることが示唆された。一方Sbno1タンパク質の生化学的機能についての解析は行うことができなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2014年度は4月から8月までの長期にわたり体調不良になり、研究の進捗に影響を与えたものの、それ以降はウェスタン解析のセットアップや免疫組織化学のプロトコルの改善などによって、Sbno1タンパク質を検出する実験条件を確立することができた。また幹細胞の一次培養といった新しい手法を取り入れることもでき、Sbno1タンパク質発現解析については計画していたよりも進んだ。一方、Sbno1タンパク質の生化学的機能の解析については手が回らなかった。よって全体としては一部に遅滞がみられたもののおおむね順調に研究は進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
Sbno1タンパク質の生化学的機能の解析に力をいれて研究を進める。これまでに酵母two hybridスクリンーニング(Takano et al., 2010)により示されているSbno1とOtub1のタンパク質どうしの相互作用の大脳皮質発生における役割を共免疫沈降法と、これらタンパク質の変異分子をマウス胎児脳へエレクトロポレーションによって導入した際に幹細胞機能やニューロンの分化にどのような影響を与えるかを調べる。Otub1はp53の脱ユビキチン化酵素であり、p53の大脳皮質発生への関与は、これまでにいくつかの研究グループによって示唆されている。そこで、p53タンパク質の発現を指標にして、Sbno1とOtub1の大脳皮質発生における機能を解析する。 また、Sbno1タンパク質の下流で制御を受けている分子機構について知見を得るためにSbno1を欠損させた際の遺伝子発現変化をマイクロアレイ解析によって調べる。 さらにCAG-CreEsrトランスジェニックマウスとfloxed Sbno1マウスを交配し、胎生12.5日からタモキシフェンを投与することで胎生期の全身でSbno1の欠損を誘導し、神経発生以外でのSbno1の必要性を確認する。
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Causes of Carryover |
4月から8月にかけて体調を崩し、研究が行えない時期があり、その分研究費の使用額が予定よりも少なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験計画ではSbno1タンパク質の下流で働く分子機構の同定を目的として2014年度に行う予定であったマイクロアレイ解析による正常細胞とSbno1遺伝子欠損細胞との間の遺伝子発現の比較を2015年度に行うので、その費用に用いる。
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Research Products
(5 results)