2015 Fiscal Year Research-status Report
神経前駆細胞の活性化と栄養状態を結ぶシグナリングネットワークの解明
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26440116
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
福山 征光 東京大学, 薬学研究科(研究院), 講師 (20422389)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | hedgehog / patched / PTCHD / 自閉症スペクトラム / 神経前駆細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題初年度に、表皮で発現し、神経前駆細胞の活性化能を有する因子としてhedgehog関連因子をコードするgrl-7遺伝子を同定した。平成27年度はgrl-7の受容体あるいは下流因子として機能する因子の探索を行った。哺乳動物やショウジョウバエでは、hedgehogは受容体であるpatchedに結合しその活性を抑制することが知られている。そこで最初に、patchedをコードするptc-1の機能減弱型変異体を飢餓条件下に暴露し神経前駆細胞を観察した。しかしながら、grl-7の過剰発現とは異なり、ptc-1変異体では神経前駆細胞の活性化は見られなかった。この観察結果をうけて、grl-7がptc-1以外の受容体を介して神経前駆細胞の活性化を促進する可能性を考えた。ヒトから線虫に至るまで、patchedに類似した構造を持つものの、独自のファミリーを形成するPTR(Patched Related)、あるいはPTCHD(Patched Domain Containing Protein)と呼ばれる蛋白質群が存在する。そこで、線虫では既にptr遺伝子群の複数の欠失変異体が作成されていることに着目し、これらの変異体群の表現形解析を行ったところ、唯一ptr-18欠失変異体が、grl-7の過剰発現と同様に、飢餓条件下における神経前駆細胞の異常活性化を示した。この表現形はptr-18のcDNAを発現させると救助できることから、ptr-18は、餓条件下における神経前駆細胞の静止期維持に必須であることが示された。さらに、ptr-18のプロモーターをmCherryやgfp-pestに融合させたレポーター遺伝子は神経前駆細胞で顕著に高い発現レベルを示すことが明らかとなった。以上より、ptr-18が表皮からのgrl-7シグナルを神経前駆細胞で受容する因子である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
grl-7の受容体候補因子としてptr-18を同定した。ptr-18はPTR/PTCHD蛋白質ファミリーに所属する。近年、ヒトPTCHD1は遺伝性の自閉症スペクトラムや知的障害に関連することが提唱されており、最近のPTCHD1ノックアウトマウスの表現形解析に関する報告もその説を強く支持する。しかしながら、PTCHDの生理機能や関与するシグナル伝達経路は不明な点が多いのが現状である。その点で、本研究にて発見された、grl-7の過剰発現とptr-18の機能阻害が同様の表現形を示すことは非常に新規な知見である。以上の点で、本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
grl-7とptr-18の遺伝学的関係や生化学的な相互作用を調べることで、これらの因子群が同一のシグナル伝達経路で機能するか調べる。また、摂食・飢餓条件下におけるptr-18の発現量や細胞内局在を詳細に調べ、ptr-18が神経前駆細胞の栄養応答を制御する分子基盤を明らかにすることを試みる。
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Causes of Carryover |
今回ヒトPTCHDの線虫オルソログであるptr-18という分子が、grl-7受容体の有力な候補因子として見出され、表皮と神経前駆細胞をつなぐ組織間シグナルの実態が、未知の新規シグナル伝達経路によって介在される可能性が見出された。また、当初計画していたnhr-91の上流シグナルもptr-18が関与する可能性があり、平成27年度に実行計画していたnhr-91自身の発現解析より、ptr-18の解析に優先順位を変更したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ptr-18やnhr-91の機能解析の実験に、遺伝子工学試薬600,00円、線虫や大腸菌培養関連試薬に600,00円、チップやチューブなどのプラスチック器具に552,406円が必要である。
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Research Products
(6 results)