2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26440135
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
佐藤 佐江(志水佐江) 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (90397472)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 分枝機構 / 細胞周期制御機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、地球規模での気候変動や水資源不足などにより、食料問題はますます深刻化している中で、植物資源の生産性向上、低炭素社会への技術革新などは急務の研究課題である。植物資源の生産性向上を目指す中で、植物の生産性に直結している「植物の枝分かれ機構の解明」は一つの有力な戦略と考えられる。枝分かれの制御機構は腋芽細胞の細胞周期の休止と進行と捉えることができる。本研究課題では、植物・動物で共通に存在する細胞周期の休止・進行を制御するマスターキー遺伝子「サイクリン依存性キナーゼ阻害タンパク質(ICK)」に着目した解析を行う。特に、抗体を用いた解析により腋芽細胞内でのICK遺伝子のタンパク質レベルでの挙動を明らかにし、枝分かれの分子機構の解明に取り組む。これまでの研究により調製した抗ICK抗体の特異性・力価を向上させるために、ICKタンパク質を用いて抗ICK抗体を精製した。休眠中の腋芽から抽出したタンパク質を用いたウエスタンブロット解析の結果、ICKタンパク質の推定分子量27 kDaにシグナルを検出できるようになった。そこで、腋芽に様々なプロテアソーム阻害剤を供与しICKタンパク質の安定性を解析した結果、ICKタンパク質の安定性にプロテアソーム阻害剤は影響を与えないことがわかった。抗ICK抗体を用いた免疫染色法で腋芽における組織学的解析を行ったところ、ICKタンパク質は休眠中の腋芽全体に存在したのでICKタンパク質は腋芽全体の細胞周期制御に関与していることが推測された。 他方、枝分かれの機構を明らかにするために、イネの幼穂発達期に青刈りし再生茎の発生に異常を示す変異体株の単離を試みている。出穂直後のイネを青刈りし、その後分げつしてきた茎数を調査した。イネの変異株集団に対して、野生型と比較して分げつ数が少ないものを候補として単離した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
抗ICK抗体の精製により抗ICK抗体の特異性・力価を向上させることができ、ウエスタンブロット解析や免疫染色法による組織学的解析が進んだ。その結果、休眠腋芽及び成長を始めた腋芽におけるICKタンパク質の動向を明らかにすることができた。この点については、おおむね順調に進行していると考えられる。 他方、イネの幼穂発達期に青刈りし再生茎の発生に異常を示す変異体株の単離・同定により、枝分かれの分子機構の解明を行っている。イネの変異集団の中から、青刈り後の分げつ数の異常を示す変異株の単離を行い幾つか候補となる変異株を単離することができた。しかしながら、当初計画していたより圃場でのスクリーニング作業に手間取り、網羅的な解析に必要であると考えているイネの数に到達することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
休眠中の腋芽及び、成長中の腋芽を比較することにより、ICKタンパク質とMPKタンパク質の動向を明らかにする。具体的な方法として、特異性・力価の向上のため抗MPK抗体を精製する。抗ICK抗体及び抗MPK抗体を用いたウエスタンブロット解析、免疫共沈降法、免疫染色法による組織学的解析などを行う。得られた結果から、腋芽におけるICKタンパク質とMPKタンパク質の機能を推測し、腋芽の細胞周期の制御機構を明らかにする。 引き続きイネの幼穂発達期に青刈りし再生茎の発生に異常を示す変異体株の単離を試みる。単離した候補変異株の形質を詳細に解析し、また同時に候補変異株から原因遺伝子を単離・同定する。得られた結果を統合することにより、原因遺伝子の機能を推測し、枝分かれの分子機構の一端を明らかにする。
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Causes of Carryover |
本研究課題では、枝分かれの分子機構を明らかにするために、イネの幼穂発達期に青刈りし再生茎の発生に異常を示す変異体株の単離を試みている。昨年度、圃場においてイネの変異集団から候補変異株の単離を試みた。しかしながら、圃場でのスクリーニング作業は当初の想定以上に手間がかかり、網羅的な解析に必要であると考えているイネの数に到達することができなかった。その結果、候補変異株の単離後に計画している原因遺伝子の単離などの解析を行うことができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度においても、イネの幼穂発達期に青刈りし再生茎の発生に異常を示す変異体株の単離を引き続き行う予定である。昨年度の作業量を考慮すると、スクリーニング作業を申請者一人で行った場合、当初の計画通りに研究を遂行することが困難であると考えられる。そこで、繰り越した金額の一部を人件費として計上することにより、効率的に作業を行う予定である。効率よく作業を行うことにより、網羅的に必要と考えているイネの数に到達し候補変異株の単離・同定を今年度中に終了する予定である。そして、候補変異株の単離の終了後に、当初の予定通り原因遺伝子の単離などの解析を遂行する計画である。
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